バイオコスモス計画水産生態系国際ワークショップの開催

浮 永久


 標記ワークショップを、仙台市の斉藤報恩会館で11月16日から3日間開催したので報告する。農林水産省が平成元年以来10ヶ年の計画で進めてきた大型別枠研究「農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する総合研究」(バイオコスモス計画)は、いよいよ今年度で終了となる。水産生態系チームは、本プロジェクト予算の約半分を頂戴し、4つのサブチーム(浮魚制御、溯河性魚制御、浅海域生物制御、岩礁域生物制御)を編成して研究を推進してきた。小職は平成7年度から本プロジェクトのリーダーを務めている。水産チームの担当者は、研究成果の発信・体系化や情報収集のため内外のシンポジウムや研究集会に企画者や話題提供者として活躍している。平成6年には国際ワークショップ「海産魚介類の初期生活期における生存戦略Survaival Strategy in Early Life Stages on Marine Resources」を開催し、成果はハードカバーの単行本として刊行されている。今回は、10年間の総決算として、研究成果を内外に喧伝し、海外の最先端研究情報を収集することを目的として2回目の国際ワークショップを企画・開催した。
 食料の安定供給のためには生産の場である自然生態系の構造と機能を理解し、これらを活用する技術の開発が欠かせない。バイオコスモス計画が掲げた研究目的は、生態系を構成する個体・個体群・群集レベルにおける相互作用やそこに介在する未知の要因に着目して、生物の生存戦略や行動様式を解明し、それらの諸原理に基づいて生物資源の管理とそのための生産技術・生産環境の制御技術の開発を目指すというものである。この研究目的は、勿論、研究推進に際して常に意識されてきたわけであるが、ゴールを迎えるに際し、改めて研究成果を総括し、実際の漁業に貢献出来るところを整理しておく作業も重要であると考えた。そこで今回のテーマは「生態秩序の解明に基づく沿岸漁業の発展Coastal Fisheries Development through Elucidating the Structure of Fisheries Ecosystems and its Management Application」とし、生態系研究の重要性について、また、我が国が生態系に積極的に関与して推進している栽培漁業の考え方について、海外の研究者を含め討論し、お互いの理解を深めることとした。
 ワークショップ開催経費で、評価委員3名、海外から6名、大学等から11名の研究者を招聘した。また、同時期開催されたUJNR水産増養殖専門部会日米合同会議の米国側メンバー7名が駆けつけ話題提供をして頂いた。この応援により国際と名打つに相応しい会議となり、UJNR日米双方の事務局に感謝申しあげる。参会者は、水研課題担当者のほか東北大学、宮城水試、(社)日栽協等のご協力もあって延べ85名となった。ワークショップの構成は、冒頭に2つのキーノートレクチュアを置き、その後、4つのサブチームを並べてセッションとした(プログラムを添付)。各セッションの組立は各チームリーダーに委ねた。その他、UJNR米国側事務局長にジョイントアドレスをお願いした。各セッションの参会者は40名程度で、議論の場としては適当な規模であり、栽培漁業に対する考え方等を巡って盛り上がり、日本人参会者も積極的に発言して集会を楽しんでいた。日本がこのようにスケールの大きいプロジェクトを展開して、水産生態系の構造と機能を明らかにし、それらを踏まえて漁業に貢献できる考え方や技術シーズを研究成果として示したことを海外の研究者も評価してくれたものと思われる。今回は26の話題提供がありこの中18編を論文として納めたプロシーディングスを来年度刊行の予定である。
 会期最終日の夜は、蔵王山麓の遠刈田温泉に宿泊し疲れを癒してもらった。初雪で薄化粧した野天風呂を内外研究者が一緒に楽しんだ。ヒューマンネットワークという貴重な財産も新たな樹枝を延ばして大きく育ったようである。終わりに、開催経費を措置して頂いた技会事務局、会議開催にご協力頂いた主査、評価委員、招聘研究員、参会者各位に感謝する。
(企画連絡室長)
参考
プログラム
ワークショプアブストラク集(表紙写真)
ワークショップ風景
初冠雪の紅葉の庭

kiren@myg.affrc.go.jp

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