東北海区における水温データの分布状況と水温図作成法

伊藤進一・清水勇吾


 東北区水産研究所海洋環境部では,東北海区の水温等値線図を描く際に,「可変型ガウシアン内挿法」(清水・伊藤 1996)を用いて,不規則に分布する水温データから,格子データを作成している.「可変型ガウシアン内挿法」の最大の特徴は,水温データの疎密に応じて内挿空間スケールが変化する点にある.しかし,清水・伊藤(1996)では,1)内挿範囲の過大評価,2)季節毎・深度毎のパラメータの未評価,3)時間方向の内挿スケールの未評価,の問題が残されていた.本論文では,月毎・深度毎の水温データの分布状況を調べることにより,すべての季節・深度を許容できるパラメータを求め,東北海区水温図作成法を改良した.
 その結果,1)内挿円は緯度1.5°,経度1.5°の矩形と同じ面積を持つ円,2)水平内挿スケールの最大値は40km,最小値は18km,減少係数は40,3)内挿時間スケールは5日,にとることが必要であることを示した.
 しかしながら,観測点の分布の現状から,時間内挿スケールは10日に取らざるを得ず,水温モニタリングの時間方向での充実が望まれる.また,現在の水温図作成法は,水温の絶対値を直接解析しているが,今後は,平年値を分離した偏差データをもとに解析を進める必要がある.
 最後に,海洋観測データの提供に常々ご協力を頂いている水産試験場等各県の水産関係諸機関,気象庁,海上保安庁,海上自衛隊,各水産研究所をはじめとする関係協力機関の方々に対し,この場を借りて深く感謝を申しあげる.

(業績番号:555A)

注:海洋環境部 海洋動態研究室
図1. 1994年の全水温データで平均した観測密度(内挿円の中の観測点数)と内挿円の中心から最も近い観測点までの距離の関係.

Shin-ichi Ito,Yugo Shimizu

目次へ戻る

東北水研日本語ホームページへ戻る