【研究情報】

一年間の大学生活-国内留学の思い出-


川端 淳

 昨年度1年間東北大学大学院農学研究科水圏資源生態学研究室(大森迪夫教授)へ国内留学させていただきました。
 目的は,蓄積した膨大なデータの整理と解析,考察を進め,学位請求論文としてまとめることでした。これまで,マサバ,マイワシ,スルメイカなど東北海域へ来遊する浮魚類の資源生態について調査研究を進めてきましたが,一連の研究成果としてなかなかまとめることができずにいました。今回国内留学の機会を与えられ,行政的な対応や雑務も多い水研から離れて,まとめることに専念することができました。
 国内留学中は,これまでに蓄積された東北〜北海道海域におけるスルメイカ,さば,いわし類についての調査船調査データや漁業データの解析を行い,これらの分布回遊生態や資源量推定について研究を進めました。とくに,近年,来遊資源量の変動が大きく,社会的影響の大きいスルメイカについて,漁場への来遊機構や,漁場域における分布生態,およびそれらと海洋環境や生物環境との関係について明らかにしました。そして,これに基づき,音響的方法による資源量直接推定手法を確立し,主要漁場である三陸北部海域におけるスルメイカ現存量を推定して経年変化を明らかにし,漁船や漁獲量との比較から妥当性も検証しました。これらの成果をとりまとめて学位論文とすることができました。
 大学では,(八戸支所よりも)静かな南向きの研究室に比較的広いスペースを与えられ,十分に研究に専念することができました。文献の利用に当たっては,図書館が構内にある他,オンラインジャーナルも豊富に利用できました。別館や他大学からの複写利用も簡便,迅速でした。大学生協での書籍の割引販売もありがたいことでした。データの解析,考察に当たっては,大森教授をはじめとする研究室の先生方から適切な指導や助言を頂きました。統計的な解析では,研究室の統計解析ソフトウェアを使用するなどして行うことができました。さらに,投稿論文の作成,学位論文のとりまとめに当たっては,とくに懇切丁寧にご指導頂きました。
 受け入れ先の水圏資源生態学研究室の研究対象は,沖合域の魚類群集,生態のほか,沿岸浅海域から潮干帯の環境と生物群集,さらには河川の環境と生物群集など多岐にわたっており,水研ではあまり接することのない研究対象や方法,考え方に触れることができ,参考になりました。また,大学院生を対象とする大森教授の生物統計学の講義を聴講し,統計学に関する知識を高めることができました。
 学生さんたちとの交流も楽しいひとときでした。残念ながら一回り以上も歳の差があったりして感覚のずれはしばしば生じ,少し寂しい思いもしましたが,反対にその感覚のずれが新鮮に感じられました。卒論研究の潮干帯における生物サンプリングに手伝いとして同行したこともありました。人力による地引き網など,大学ならでは?の体力勝負のサンプリングに久しぶりに触れて新鮮な思いがしました。と同時に翌々日は筋肉痛でつらい思いをしました。皆さんよくがんばって研究をまとめ,進路を決定し,無事卒論発表が済んだときには私も一緒になって安堵しました。
 最後になりましたが,1年間暖かく受け入れて下さった大森教授をはじめとする東北大学水圏資源生態学研究室の皆様に心よりお礼申し上げます。また,不在中の業務を肩代わりいただいた八戸支所資源生態研究室の方々,ご協力いただいた水産研究所の皆様に感謝いたします。
(八戸支所資源生態研究室)