【研究情報】

ワークショップ“Summary and Synthesis of Contributions from NEMURO and NEMURO.FISH”を開催して

伊藤進一


 PICES MODEL Task Teamが北太平洋の低次生態系の共通モデルとして開発を進めてきたNEMURO(North Pacific Ecosystem Model for Understanding Regional Oceanography)とNEMUROをより高次の魚類の成長に結合させたNEMURO.FISH(NEMURO For Including Saury and Herring)の研究成果を一同に結集し,議論することにより,今後の研究方針を明確化することを目的として,ワークショップ“Summary and Synthesis of Contributions from NEMURO and NEMURO.FISH”を開催しました。
 ワークショップのコンビーナーは,Michio J. Kishi(北海道大学),Bernard A. Megrey(米国海洋大気省),Francisco E. Werner(米国ノースカロライナ大) と報告者の4名です。岸氏とMegrey氏が以前のMODEL Task Teamの共同議長を,Werner氏と報告者が現在の共同議長を勤めおり,この4名を中心に,NEMUROとNEMURO.FISHの開発を進めています。ワークショップは2003年12月15日〜18日の4日間,中央水産研究所国際会議室で行われました。
 ワークショップを開催する半年以上前から,コンビーナー4名による詳細な議論が始まり,このワークショップにおいて,NEMURO & NEMURO.FISHの特集号を組むことを話合うことが合意されました。特集号を掲載する雑誌として,Ecological Modellingが候補となり,Senior Editorから合意を得て,特集号の編集に向けての準備に入りました。従って,このワークショップへの参加は,特集号への投稿を前提としたものとなりました。
 ワークショップには,Megrey氏,Werner氏の他に,NEMUROおよびNEMURO.FISHの開発に参加してきたKenneth Rose氏(米国ルイジアナ州立大),Daniel Ware氏(カナダ水質環境協会),Douglas E. Hay氏(カナダ水産海洋局),Robert A. Klumb氏(米国魚類野生生物局),David L. Eslinger(米国海洋大気省)を招聘しました。
 ワークショップ初日は,Ecological Modellingに投稿予定の論文22篇の内,19篇についての内容の発表が行われ,2日目以降も含め討論が行われました。そして,本特集号への投稿ポリシーが以下のように固められました。
 The journal is concerned with the use of mathematical models and systems analysis for the description of ecosystems and for the control of environmental pollution and management of resources. It combines mathematical modeling, system analysis, thermodynamics and computer techniques with ecology and management of environment and its natural resources. The impact on ecosystems can only be described quantitatively by application of ecological models understood by the use of ecosystem theory.
 そして,特集号投稿論文としては,0)NEMUROもしくはNEMUROから派生したモデルを使用し,もしNEMURO以外の低次生態系モデルを使用する場合には,NEMUROとの違いを質的に明示することとしました。また,内容としては,1)生態系もしくは資源管理の問題にNEMUROもしくはNEMURO.FISHを応用したもの,2) 海洋生物資源の時空間変動を評価するためにNEMUROまたはNEMURO.FISHを用いたもの,3)NEMUROにおける方程式系,数学的・論理的視点,解法の改良に関するものとして,モデルの記述に関しては4) オリジナルのNEMUROから変更点を明記することが決められました。
 その結果,論文内容の再編成も含め,最終的に20篇が投稿に合致しているという結論に至りました。それぞれの論文の著者毎によるグループディスカッションを行い,論文の構成を固めるとともに,解析にあたり共有可能なデータおよびモデル結果についても議論がなされ,非常に有益なワークショップになったと感じています。今後の予定としては,2004年6月に特集号編集者への投稿,8月に編集者会議を行う予定になっていますが,このワークショップの成果を活かして,充実した特集号を組みたいと考えています。
 最後になりましたが,このワークショップは,水産総合研究センター交付金国際共同研究「北太平洋における気候変動に対応した低次生態系と高次生態系の変動を予測するためのモデル開発」の一環として開催いたしました。また,会議の開催準備に協力して頂いた東北区水産研究所総務課の皆様と中央水産研究所生物生産部生物生態研究室の皆様に感謝の意を表します。
参加者による記念撮影:於蒼鷹丸甲板上
(混合域海洋環境部海洋動態研究室)