西部北太平洋におけるサンマの耳石透明帯の形成時期
巣山 哲*1・桜井泰憲*2

 サンマの年齢・成長については,鱗や耳石透明帯,体長組成の解析および耳石日周輪に基づいていくつかの研究が行われてきたが,その結果は一致していない.特に,耳石日周輪による成長の研究結果については,孵化後半年間の成長についてはほぼ同様の結果が出されているものの,それ以降の結果については研究者によりまちまちである.一般に大型と呼ばれる体長290mm以上のサンマの耳石には,1本または2本の耳石透明帯が観察されることが知られている.この透明帯については冬季に形成されると報告されているが,すべての個体に冬季に形成されているのかについては明らかにされておらず,1本目の透明帯と2本目の透明帯が同じ季節に形成されたものかについても触れられていない.耳石透明帯がすべての個体に同じ時期に形成されているのであれば,齢形質として有効に使うことができると考えられる.また,透明帯に当たる部分では耳石日周輪が不鮮明であり計数が難しいため,耳石日周輪による日齢査定の大きなネックとなっている.このように,耳石透明帯はサンマの年齢・成長を研究する上で大きな意味を持つと考えられる.
 そこで,本研究では1991年2月から1992年12月に西部北太平洋において採集された体長179〜340mmの1106個体の耳石を観察し,透明帯に基づいて耳石の類型化を行い,体長と透明帯の有無の関係および透明帯の形成時期を調べた.透明帯に基づく類型化では1)透明帯が見られない耳石型,2)明瞭な透明帯は観察されないが,耳石の中心付近の白色の部分の外側に半透明な部分が形成されている耳石型,3)耳石縁辺部付近に明瞭な1本の透明帯が認められ,その外側は再び半透明になっている耳石型,4)耳石縁辺部付近に形成が終了した明瞭な2本の透明帯があり,その外側は再び半透明となっている耳石型および5)T型からW型に含まれない耳石型の5型に分けられた.
 体長と耳石型を比較すると,280mm以下の個体では約80%で耳石透明帯が見られなかったのに対し,281mm以上の個体では明瞭な透明帯を持つ個体が65.4%, 耳石縁辺部が広く半透明になっている個体が15.8%出現した.体長280mm以下の個体では透明帯が形成されている個体の割合が50%を超え2月には100%となったことから透明帯形成時期は冬季であり,耳石透明帯の存在は越冬したことを示していると考えられた.一方,2本目の透明帯についても主に冬季に形成されていると考えられたが,一部の個体では,それ以外の時期に形成されているものも出現したため,耳石透明帯を2本持つ個体については,2回越冬したものであるかは明らかではなかった.
*1:八戸支所 資源生態研究室
*2:北海道大学 水産学部

Satoshi Suyama, Yasunori Sakurai