北西太平洋におけるサンマの生活史とそれにもとづく資源変動の考察
小坂 淳

 本研究はサンマの生活史を全面的に解明することを目的に、年齢・生長を客観的に判断する方法を確立し、卵巣卵の発達過程を組織学的方法で観察し、分布・移動などの生活様式を明らかにするため広範囲な海上調査などを行い、生活史の詳細を究明した。
 1.生長:ウロコの隆起線間隔の変化から大型魚では半径2.3mm前後で年輪が形成される。大型魚の鱗相には年輪があるが、中・小型魚にはない。生長が速いのは体長13〜15cm前後、年輪形成時は23cm前後。耳石の透明度の変化は、ウロコの隆起線間隔の変化と同様。体長組成の推移から、1〜3月は仔・稚魚主体、4月〜8月には幼・未成魚期を経て成魚期へ移行し、5・6月に生長が速い。この間に、中・小型魚から大型魚へと連なる組成の変化がある。9月以降は生長が停滞する。以上から大型魚は年齢T+、中・小型魚は年齢0+と判断される。
 2.再生産:卵巣の染色仁期が稚魚期、周辺仁前期が幼魚期、周辺仁後期がほぼ未成魚期、卵黄胞前期以降が成魚期に対応する。卵巣卵の発達様式は非同時発生型で、第3次卵黄球期の卵は急速に成熟し、排卵される。抱卵数はほぼ1000〜3000と推定される。ほどなく成熟・産卵する雌の生殖腺指数は2.0で、それ以上の個体は2・3月と6月に多い。
 3.分布・移動・回遊:産卵は秋には混合水域内の暖水域、冬には黒潮外側の亜熱帯モ−ド水域、春には黒潮系北上暖水域。仔・稚魚は春〜初夏に北上回遊し、未成魚期に達すると年齢T+の生殖腺未発達グループとともに親潮水域に移動。年齢T+の生殖腺が発達したグループは親潮水域へは回遊せず、混合水域内で秋季に産卵。秋季の親潮水域からの南下群は、親潮前線を通過後に生殖腺が発達して産卵準備期へ移行し、冬季以降に産卵する。
 4.資源構造:年齢、性比および脊椎骨数の構成、寄生虫の寄生率の分布、生長・再生産過程等から、1つの系統群ではあるが、グループに分れて生活していると示唆される。
 5.資源変動の考察:資源変動には発育段階・生活周期に対応した海況、餌料生物、捕食動物、競争種および漁獲努力の変動が関与すると考えられる。
(漁業情報サービスセンター)

Sunao Kosaka