東北海域におけるズワイガニの分布と生物特性
北川大二

 ズワイガニは北極海のアラスカ沿岸,グリーンランド西岸,ベーリング海,オホーツク海,日本海および茨城県以北の太平洋岸に広く生息しており,我が国では主として日本海とオホーツク海において漁獲される重要な資源である.東北地方の太平洋側においても宮城県と福島県沖を中心にして主に沖合底びき網漁業により漁獲されているが,その漁獲量は青森県から茨城県でおよそ300トンと少なく,漁業の歴史も浅い.
 日本海ではズワイガニの資源,生態に関して多くの知見があるが,東北海域ではこれまで主要な漁獲対象ではなかったために研究はほとんど行われておらず,生物学的知見は極めて少ない.本研究では1997年と1998年に若鷹丸(東北区水産研究所所属,692トン)および但州丸(兵庫県立香住高等学校所属,499トン)により着底トロールを用いて行われた調査で得られた資料に基づき,東北海域におけるズワイガニの分布特性,成熟サイズおよび甲幅と体重の関係について検討した.
 ズワイガニは水深150〜750mに出現し,そのうち350〜500mで分布密度が高かった.ズワイガニが採集された調査点の底層水温は2.9〜10.4℃で,そのうち曳網面積1km2あたり500個体以上採集された調査点では2.9〜6.8℃であった.甲幅40mm以下の稚ガニは水深400m以浅の海域に広く生息するが,成長とともに次第に深所へ移動していくと推定された.東北海域のズワイガニはオホーツク海や日本海に比べて深い所にまで分布しているが,生息域の水温は最も高いと考えられた.最終脱皮後の成体ガニの最小個体は雄では甲幅51.6mm,雌では49.4mmであり,成熟率50%の甲幅は雄が78.6mm,雌が65.8mmと推定された.雌の成熟サイズは日本海西部やオホーツク海とほぼ同じであったが,雄では両海域よりも小さいことが明らかになった.雌雄それぞれについて,最終脱皮前のものと最終脱皮後のものの甲幅−体重の関係式を求め,回帰式の傾斜と高さについて有意差の検定を行った.雄では高さ,雌では傾斜,高さともに有意差がみられた.
(八戸支所 資源評価研究室)

Daiji Kitagawa