有用海藻類の組織培養に関する基礎技術の習得
山口正希

 私は岩手県水産技術センターの増養殖部という部署において海藻類(主にワカメ、コンブ)を研究テーマに調査や試験等を行っています。当然のことながら今回の研修では海藻を題材として行ってきました。研修は平成11年6月14日から8月13日までの2ヶ月間で、有用海藻類の組織培養に関する基礎技術の習得を目的に海区水産業研究部資源培養研究室の村岡さんにお世話になりました。
 今回の研修では、2ヶ月間という長いようで短い期間内に組織培養基礎技術習得の他に、藻類の薄切片作製技術および走査型電子顕微鏡操作技術の習得も合わせて行ってきました。というのも私自身、細胞の微細構造を観察する技術が不足していたため、ワカメ、コンブ病理の原因解明等において検討材料が不足していたからです。実際、研修では藻類の薄切片作製技術および走査型電子顕微鏡操作技術の習得に重点を置いて研修することとなりました。
 前述の通り私は切片作製技術については初心者であり、本当に基礎的なところから始めたため村岡さんにはご迷惑をかけたことと思います。内容としては、岩手で採集したコンブをサンプルに用い、試薬の調合から始め、試料の固定、包埋、切片の作製、観察までを教えていただきました。聞くもの、見るもの初めてのことが多く、手間取った部分もかなりありましたが、村岡さんの親切丁寧な指導のおかげで切片作製を終え観察することができました。最初の切片を顕微鏡で観察し、この目に細胞の微細構造が入ってきたときは「失敗しなかった!」とこれまでの切片作製行程の自信の無さが払拭される思いでした。この研修で得た画像はこれまでに知り得なかった知見を得ることができ、今後の研究に利用していきたいと考えています。
 岩手県には走査型電子顕微鏡が配備されているのですが、私自身これまでに使用したことがなかったので、これを機会に操作技術も併せて習得することとしました。海藻類の試料作製は村岡さんに、走査型電子顕微鏡の操作は沿岸資源研究室の高見さんにご指導をいただきました。なにぶん高額な機械であることと、外部の備品であることから操作にはいささか緊張感を伴いましたが、こちらも良い画像を得ることができました。
 塩釜での研修生活は水研の宿舎を利用させていただきました。最初は多少の不便を感じたり、また季節は夏ということで寝苦しい夜もありましたが、環境の変化に順応しやすいのか岩手に帰る頃にはすっかり慣れ、風呂場のダンゴ虫たちにも親近感を覚えるほどでした。ただし加工場の臭いだけは耐えられませんでした。水研のみなさんは私に優しく接してくれて、昼休みのサッカー練習や若手職員(独身?)らによるボーリングなどは、つらい(?笑)研修に一時の清涼感を与えてくれて良い思い出となっています。唯一心残りといえば、高見さんと釣りをして負けたことが悔やまれます。
 本研修は資源培養研究室の村岡さんのあたたかい御指導御鞭撻のもとに行われたものでここに深甚なる感謝を表します。また、資源培養研究室室長の斉藤さん及び猪股さんへ深い感謝を表します。さらに、東北水研職員のみなさまにも心から感謝する次第です。
(岩手県水産技術センター、依頼研究員 6/14-8/13)

Masaki Onodera

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