DNAを用いたマサバ、ゴマサバの種判別技術の習得
小野寺光文

 私の依頼研究員としての生活は、平成11年9月20日から東北区水産研究所海区水産業研究部資源培養研究室の斉藤室長の下で、「DNAを用いたマサバ、ゴマサバの種判別に関する研究」の技術習得を目的にスタートしました。
 分子生物学の分野は初めての体験でしたが、私は大学時代に海洋細菌をテーマにした卒業論文を手がけたこともあり、無菌操作や細胞培養などの実験をこなすことに卒業以来のブランクがあったものの、ほんのささやかですが自信はありました。
 しかし、依頼研究員として出向いた日にその自信は音を立てて崩れ去っていました。斉藤室長の懇切丁寧な指導にも関わらず、自分なりの理解に時間がかかってしまうだけでなく、室長の神業的な(私にはそう見えた)手さばきを見ているうちに「本当に自分はこの技術を習得できるのだろうか。」と言う不安が次第に大きくなっていったのです。
 結局、勉強不足がたたって、毎日が失敗の連続、ある日は帰宅した室長宅まで電話をかけて指示を受ける始末。私に対する水産研究所内の評価はいかばかりか分かりませんが、今までの中で一番最低な依頼研究員だったのではと、大変恥ずかしく思いました。
 依頼研究員として期間内に実験した内容は自分にとって大きな衝撃でしたが、それにもましてショックだったのが、私と水産研究所の方々との「質」の違いでした。水産研究所の方々はそれぞれが「Scientist」であり、目的意識がはっきりしていて、効率の良い作業の進め方を実践していました。私の場合は「Worker」と呼ぶのがふさわしく、つくづく「無駄な行動が多い」と言うこと、また、日頃から何事に対しても目的意識が薄く、はっきりとした目標がないまま行動をしていることを感じました。これらのことは、日頃何気なく行動し、それが当たり前のようにも思えていたことでした。
余談はさておき、技術習得の内容は細胞組織からのゲノムDNA抽出技術、PCR反応と電気泳動の技術、ライゲーション、トランスフォーメーション、シーケンス等々、分子生物学のほんの末端しか垣間見ることができなかったと思っています。
 私が行う実験は失敗の連続でしたが、その合間には数える程度の成功があり、その時は「ほっ」と胸をなでおろしたものでした。特に、今回の研究対象としたマサバ、ゴマサバのリボゾームDNAの一部、ITS1の塩基配列を解読することができたことや斉藤室長がすでに解読していたITS2の塩基配列と私が実験して得た塩基配列が一致した時は感激した事を覚えています。
 残念ながら、11月19日までの2ヶ月間は実験の技術習得とパソコン操作で「あっ」という間に終わってしまいました。最終目標である種判別に係るPCR用プライマー設計とその検討及び、論文作成には至りませんでしたが、今後の実験結果に期待が持たれるものとなりました。私自身、分子生物学の研究は初めてと言うこともあり、技術習得することが多く、もう少し期間が長かったらというのが実感です。
 今後は、常に学習する心を忘れずに、水産研究所の方々を手本にScientistを目指し、精進していきたいと思っています。
 最後に、本技術習得にあたり、資源培養研究室の斉藤室長には多大な御指導・御鞭撻を賜り厚く御礼申し上げます。また、同室の村岡研究員、臨時職員の猪股さんには懇意にしていただき、ここに深く感謝いたします。さらに、東北区水産研究所職員の皆様には、期間中何かとお心遣いいただき心から感謝いたします。
(岩手県水産技術センター、依頼研究員 9/20-11/19)

Mitsufumi Onodera

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