東北沿岸域における人工衛星ADEOS/OCTSのクロロフィル濃度の検証と海洋環境
横内克巳*1・藤原 豪*2・川村 宏*2
武士和良*3・松本育夫*4・高杉 知*5
佐藤晋一*6・上田賢一*7・奥田邦明*8

 人工衛星海色センサーOCTSのクロロフィル画像を水産学や海洋学などの分野に応用するための基礎的研究の一環として、1997年4月から6月までの期間に常磐鹿島沖の黒潮続流前線域において、OCTSバージョン3成果物を海表面クロロフィル濃度と比較することによって検証し、OCTSクロロフィル濃度が高濃度領域において過小評価となっていること、沿岸域でゴースト現象が見られることなど、アルゴリズム改良の必要性を指摘した。また、クロロフィル画像と水塊配置や流れ場との対応関係を検討した結果、黒潮続流の第1峰付近で観測されたフロント渦及び鹿島灘の地形性渦においてクロロフィル濃度が高いことを示した。このクロロフィル高濃度域は、黒潮によるクロロフィル高濃度沿岸水の供給と低気圧性循環に関連して発生する湧昇流によって形成・維持されていると考えられた。さらに、浮魚類の漁場はしばしばクロロフィル高濃度域に対応した位置に形成されており、浮魚類の餌料となる動物プランクトンや仔稚魚を介して植物プランクトンが漁場形成の重要な要因の一つとなっていることが示唆された。以上のように、OCTSクロロフィル画像は海洋における生物過程の詳細を理解するための強力な手段であり、物理・化学を含めた学際的研究での活用が期待される。
*1:混合域海洋環境部 生物環境研究室
(現 西海区水産研究所 東シナ海海洋環境部)
*2:東北大学大学院 理学研究科
*3:茨城県水産試験場
*4:福島県水産試験場
*5:岩手県水産技術センター
*6:青森県水産試験場
*7:宮城県水産研究開発センター
*8:混合域海洋環境部長

Katsumi Yokouchi, Go Fujiwara, Hiroshi Kawamura,
Kazuyoshi Takeshi, Ikuo Matsumoto, Satoru Takasugi,
Shin-ichi Satou, Ken-ichi Ueda and Kuniaki Okuda

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