スルメイカのターゲットストレングスの測定

川端 淳


 近年日本周辺でのスルメイカ漁獲量は高い水準にあるが、昨年は各地で大幅に減少し今後の動向が注目されている。スルメイカは平成10年からTAC対象種に指定され、その合理的な利用には、資源量の的確な把握と精度の高い漁況予測が不可欠である。スルメイカは単年性のために漁獲統計資料を用いた統計的な方法による資源量評価が難しく、試験操業のCPUEなどの相対的な指標に基づく評価・予測が中心となっているが、直接的な現存量評価の必要性が高くなっている。
 エコー積分方式に基づく計量魚群探知機は、高機能・高精度化し、水産生物の定量化技術の主流として定着してきており、近年、我が国でも現存量評価への適用が広く行われている。しかしながら、スルメイカに関しては、ターゲットストレングス(TS)の知見が乏しい、魚群反応をとらえにくいなどの理由から、これまでほとんど適用されていない。エコー積分方式に基づく計量魚探を使った分布密度の推定は、積分された魚群エコーを1個体当たりのTSで割って行うため、対象となる魚種のTSの情報が必須である。
 本報では、東北水研所属調査船若鷹丸搭載の計量魚探を使って、これまでに測定例の報告されていない低周波38kHzにおけるスルメイカのTSを、垂下した標本について、および漁場域での自然分布状態下において測定した。その結果、標本については姿勢制御が困難なために妥当な測定値が得られなかったが、自然環境下では、測定に影響を及ぼす魚類や他のイカ類の分布がほとんどなく、単峰形の体長組成を示すスルメイカが分布していたため、測定値の頻度分布からTSを推定し、調査数が少ないものの18〜24cmの外套長とTSの関係を得た。推定値は、既往の報告の測定結果やモデルによる理論値と照らしあわせても、おおむね妥当であると思われた。自然環境下では、測定対象物の体長や姿勢、密度などの情報が明確ではなく、さらにプランクトンや別の個体など他の反射体の影響が入ってくるため、測定値はあくまで推定の域を脱し得ないものの、計量魚探によるスルメイカ分布量の推定を行う上で有意義な調査結果であると思われる。また、今後、計量魚探による分布量推定精度向上のためには、自然分布状態での平均的な姿勢(体軸方向)を反映した生体のTS測定例の蓄積が必要であろう。
(八戸支所 資源生態研究室)

Atsushi Kawabata

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