異なる算出方法によるマコガレイ成長式の比較
池川正人

 従来魚類の成長式の算出では、耳石半径と体長の回帰式から各輪紋半径を用いて算出する方法が多用されてきたが、これまでこの方法で得られた成長式の精度について知見はほとんど得られていない。
 成長式の算出方法としては他に非線形最小二乗法を用いる方法が知られている。この方法はパソコンの使用により比較的簡単に成長式が算出可能であり、また標本採集時点での年齢、体長のみを用い過去の時点での体長を逆算する必要がないため、得られる成長式は実際に近いものと考えられる。
 そこで本研究では福島県で水揚げされたマコガレイPleuronectes yokohamae GUNTHER 929個体(雄466個体,雌463個体)を用い、以上の二つの方法により成長式を算出し比較を行なった。結果は次の通りであった。
輪紋半径から求めた式(輪紋半径式)
雄:SLt=290.59(1-e-0.546(t+0.150))
雌:SLt=410.66(1-e-0.340(t+0.129))
非線形最小二乗法を用いた式(最小二乗法式)
雄:SLt=436.69(1-e-0.184(t+1.656))
雌:SLt=426.69(1-e-0.350(t+0.297))
SLt:t歳における標準体長(mm)

 今回得られた二つの式を、1975〜1984年の標本を用いて算出した福島県海域産の式、及び仙台湾産などのほかの海域の式と比較したが、今回の方がおおむね成長が良いことが示された。
 また輪紋半径式は最小二乗法式より成長が遅く示され、かつ実測値より離れた結果になっており、過小評価されているとみられたが、年級群による成長差あるいは核に近い部分の輪紋半径の過小評価が、輪紋半径式、最小二乗法式の間に生じた差の一因であることが示唆された。
 (Abstract和文:従来魚類の成長の算出は耳石の輪紋半径を用いて算出することが主であったが、その精度についての知見は少ない。そこで本研究では福島県産マコガレイを用い、輪紋半径からの式と、実測値に近いと思われる最小二乗法を用いた式との比較を行った。結果は以下の通りであった。
 輪紋式は最小二乗法式と比較し成長を遅めに示す結果になった。年齢群による成長の差と輪紋の読みとりの際の誤差が原因の一部であることが示唆された。)
(福島県水産試験場)

注)下線部は冊子体ではスモールキャピタルでした
Masato Ikegawa

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