研究所一般公開について

手島和之


 平成10年10月11日、日曜日。その日は、東北区水産研究所の一般公開である。朝から空は晴れ上がり、一般公開にはもってこいの日であった。その盛況ぶりを思い出しながら、東北区水産研究所の一般公開について感じたところをまとめてみたい。
 東北区水産研究所の一般公開への道は、次の3つの段階でとりまとめられよう;1)一般公開までの準備期間、2)公開当日及び3)公開後の反省会(来年へ向けて)。それでは、それぞれについて述べることとする。

一般公開までの準備期間
 東北区水産研究所では、研究所一般公開を成功させるための委員会(一般公開幹事会)を組織し、どのようなことを行えば、より多くの方々が研究所に出向いて頂けるのか、ということを中心に考えることにした。この幹事会(企画連絡室、庶務課、資源管理部、海洋環境部、資源増殖部、八戸支所、若鷹丸からの代表者)は、平成10年5月22日に第1回の会合を開催した。その席で、公開日時(平成10年10月11日)、調査船若鷹丸と研究所の双方で実施、来訪予定者(200名)、公開する場所・項目、広報用チラシ(一般公開のテーマ)作成、記念品の準備等について、決定及び懸案事項が話し合われた。
 第2回目の幹事会は、平成10年7月28日に開催された。この場で決定された事項は、若鷹丸及び研究所での公開場所・項目に加え、広報活動と役割分担等であった。広報活動としては、広報用チラシを配布、添付することとし、その配布・添付先としては、1)一般(報道関連、近隣市町村役所広報課(塩釜、多賀城、利府、七ヶ浜、松島、仙台)、関係業者)、2)漁業関係者(近隣漁業会社、漁業協同組合)、3)教育機関(近隣大学、高等学校、中学校、小学校)、4)周辺民家、5)職員関係(知人等)が羅列される。これらの内で、特に3)の教育機関が、今回の水産研究所への訪問が良い機会となり、将来水産研究者を目指す人が増えることが期待される、ということで注目を集めた。役割分担としては、当日及び準備のための担当部署を決めるというものであった。
 さらに、第3回(平成10年9月16日)、第4回(平成10年10月5日)と幹事会が開催され、それぞれの項目について具体性が増していった。特に、広報活動としては、市町村広報誌及び報道関係機関に一般公開の記事の掲載をお願いしたり、塩釜のケーブルテレビ「マリネット」が公開の取材を行い、その際に情報係長が出演したり、大学(東北、東北学院、石巻専修)、高等学校(塩釜、多賀城、松島)へ、また教育委員会を通じて塩釜、多賀城、利府、七ヶ浜、松島管内の小・中学校へ広報用チラシの掲載をお願いしたり、東北水産研究所のOB会(三陸会)地元在住者に対して公開への出席依頼をしたり、さらには、知り合いを通して図書館、公民館等の公共の場所へのチラシの掲示を依頼したり、私達が住んでいる公務員宿舎の掲示板へチラシを・・・・と新たな展開を行った。 また、水産研究所要覧、記念品、アンケート等事前に準備するもの、受付・案内、記録係、駐車場誘導係、連絡便(研究所と若鷹丸)運行係、・・・・、各部、支所及び若鷹丸の展示項目等、当日行うもの、の分担を行った。広報用チラシとして2種類の印刷物が企画連絡室情報係長によって作成された。そのチラシに、テーマとして、「海は地球の宝物」と記されていた。10月9日(金)、13時30分より、一般公開のための準備として、研究所内の清掃、展示場の整備等を行った。10月11日の一般公開日の天候を気にしながら・・・。

公開日当日(平成10年10月11日(日)
 平成10年10月11日、日曜日。本日は、東北区水産研究所の一般公開である。空は、朝から晴れ上がり、一般公開にはもってこいの日である。
 八戸支所長は、一般公開当日朝7時過ぎに研究所に車を運転して到着、展示用の魚を八戸から運んで来た。クロタチカマス、マカジキ(体重51kg)の頭部と尾部、シイラ、・・・・それに水産研究所の冷蔵庫(八戸支所の職員が若鷹丸で漁獲したもの)のさかなと併せて、13種以上、企画連絡室で準備したサンマ、シロザケ、キチジなど6種、玄関から入った一階でこれらのさかなを展示。八戸支所の2研究室とサンマをパネルで紹介、展示したさかなとともに、公開を開始した10時から、さわれる展示物として好評を博した(表紙写真1)。
 混合域海洋環境部は、八戸支所の展示物と向かい合わせの状態で、パネルによる展示を開始した。10月1日付けで環境部に加わった高次生産研究室(以前は漁場生産研究室、資源管理部)の展示と併せて、3研究室によるパネルでの部及び研究室の紹介である(表紙写真1)。研究室紹介と同時並行的に実施されたミニ講演会で講師を務めた混合域海洋環境部の杉崎宏哉さんが、講演で使用した海の小さな生き物たち(サンマの仔稚魚など)と実体顕微鏡を海洋環境部のパネル展示場の前に持っていった途端に、黒山の人だかりとなった。パネル展示に加え、実際のものを示した展示がいかに、人々に直接訴えることができるのかと、思い知らされた光景であった。
 多くの催し物と並んで2つのミニ講演会が会議室で開催された。11時30分からの「海の小さな生き物たち」(杉崎宏哉さん)と、14時30分からの「耳石ってなあに? - 耳石で何がわかる」(海区産業研究部の山下 洋さん)であった(表紙写真2)。一般の人々に取っては、耳慣れない言葉も、講演を聴いて納得。やはり、こういう機会(講演会などの説明会)は必要と感じた。
 海区水産業研究部では、10月1日付けで3研究室の名前が変わり、新たな出発となった。3研究室の仕事の紹介に加え、近海に分布する動物の展示・説明それにアワビ稚貝の配布等。特に、近海の動物として集められたヒラメ、クロソイ、イシガレイ、アイナメ、カスベ類、エゾアワビ・・・・などは水槽内を自由に泳ぎ回り、訪問者は直接これらの生き物に触れることができるようになっており、まさにタッチプールとして活用された。また、生き物を見たり、触ったりして分からないことがあれば、すぐ近くにいる海区水産業研究部の職員に尋ねることができるように配慮されていた(表紙写真3)。特に、圧巻だったことは、展示の終わり頃に、訪問者に配られたアワビの稚貝であった。ビニール袋に入った稚貝を手にして会場を後にする姿・・・ある主婦らしき女性が一言、『もう少し、大きければね・・・』
 10時になるのを待ちわびたように、行列ができたのは、やはり調査船“若鷹丸”の舷門前であった。NHKの昼のニュース放送で東北区水産研究所の一般公開が報じられてからは、さらに訪問者の数が増加した。船舶職員と海洋観測機器の説明を行う混合域海洋環境部の職員との連携によって、訪問者の列は実にうまく、途切れることなく進んでいった。若鷹丸は平成7年3月に建造された総トン数、692トン、航続距離6,000マイルの多目的調査船で、その特徴はブリッジにある。船の中心部である航海計器、機関計器、通信計器等がブリッジに集合して設置してあり、航行中には、航海、機関及び通信分野の職員がブリッジで一体となり、操船を行う(表紙写真4)。これらの説明を行う船長及び各職員の動作にも、何かしら機敏性が漂っていた。
 また、ミニ講演会が開催された会議室横の計算機室では、インターネットの実演が行われ、世界中からの情報が入手できる喜びを、訪問者の多くが感じているのが分かった。

公開後の反省会(来年へ向けて)
 来訪者数;研究所 206名(内、来訪者名簿記載者;186名、アンケート回収;58枚)、若鷹丸 270名(内、乗船者名簿記載者;143名、アンケート回収;68枚)、延べ来訪者合計;476名。
 平成10年11月11日(水)に第5回研究所一般公開幹事会が、「今年度の一般公開の総括並びに次年度へ向けて・・・」という議題の元で開催され、次のことが検討・討議された。

 アンケート結果の概要(6つの質問に対する答え(下線部)を、つなぎ合わせた);新聞、テレビ、ポスターで東北区水産研究所の一般公開の日程を知り、 参加したら、勉強になった。若鷹丸の見学が一番面白く、魚について興味があった。開催日程は、このまま(日曜日)でよい。今回の催し物を通して水産研究所について初めて知った・・・となり、来所者が延べ476名と昨年より急激に増加したことと併せて、成功であった。
 混合域海洋環境部としては、展示の方法にもう少し工夫が必要であった。最初、パネルのみの展示であったが、その後展示物を陳列すると、急速に来客数が増えた。
 海区水産業研究部では、研究棟の開放も考えるべきだと思った。研究者を適材適所に配して、分かり易い説明で、熱心に説明する必要があることが分かった。
 アンケートについて;アンケートを記入する場所がなかった。男女、年齢が分かる用にしてほしい。肯定的な回答であるように思える。例えば、2.の項目に、面白くなかった等の、項目を入れたらどうか。用紙の回収方法を工夫したらどうか。
 本館2階のベランダの利用について;眺めがよいので、自動販売機などを設置したらどうか。また、アンケート記入場所をここにしたらどうか。
 一般公開を知らせるポスター等について;直接、町内会や学校へ送付する方が良い。
 アワビの稚貝配分について;来客の目玉の一つになったと思うが、何回かに分けて配ったらどうか。将来は、物の配分を目玉にしない方向にしたらどうか。
 道順について:水産研究所(若鷹丸)への道筋をもう少し工夫して展示してはどうか。
 若鷹丸から:若鷹丸が塩釜港に接岸している時期に是非公開する必要があるので、来年の一般公開の日時については、船との間で調整する。
 キャッチコピーについて;来年度のキャッチコピーについては、他のものを参考にして、一般公開に関係することがらをすべて盛り込む予定。
 来訪者の住所について;一般公開で来所した方について、どこから来たのかを知りたい。これについては、後日分析し、来年度開催の参考とする。

 以上が、反省会の概要だ。来年度には、さらなる努力を重ねて、今年以上に来訪者数を増やすよう工夫し、可能ならば将来水産研究所で働きたいと思う人材を一人でも多く招きたいと願っている。

ポスター

(企画連絡科長)

Kazuyuki Teshima

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