中層トロール網採集によるパラオ・ミクロネシア周辺海域におけるカツオ・マグロ類稚魚の出現状況

田邉智唯 1),小倉未基 1),高橋未緒 1),渡辺 洋 2)


 カツオ・マグロ類の稚魚期における分布に関する生態的知見を得ることを目的として、西部太平洋熱帯海域(パラオ・ミクロネシア周辺沖合域)において、中層トロール網を用いた稚魚の分布調査を行った。1992年〜96年10月〜12月に採集された6,724個体のカツオ及び1,373個体のマグロ属標本を用いて、稚魚の出現状況を明らかにした。カツオ稚魚は、北赤道海流域〜北赤道反流域の広範な海域に出現した。マグロ属稚魚は、カツオより南側の北赤道反流域における出現量が多かった。これらの結果から、パラオ・ミクロネシア周辺沖合域がカツオとマグロ属Thunnus spp.にとって、稚魚期における重要な成育場であることが確認された。
 カツオ稚魚の鉛直分布の中心は、表層混合層の下部〜水温躍層の上部にあったが、マグロ属のそれは表層混合層にあった。このことから、稚魚期における棲息水温は、カツオよりもマグロ属の方が高いことが示唆された。
 さらに、体長と採集された水深との関係から、カツオ・マグロ属ともに体長が大きくなるほど出現する水深層が狭くなる傾向が認められた。このことは、カツオ・マグロ属が成長による遊泳能力の発達に伴い、より好適な分布水深を選択することが可能となることを示しているものと推察された。

参考:カツオKatsuwonus pelamis(上)とマグロ属Thunus spp.(下)における体長と出現水深との関係。

1)資源管理部 浮魚資源第二研究室
2)中央水産研究所 生物生態部

kiren@myg.affrc.go.jp

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