着任の挨拶

中村保昭

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 この度、平成10年4月1日付けで所長を拝命することとなりました。静岡県を振り出しに30年余、この間、西海水研、水工研、中央水研、水産庁と暖流系の各地を回遊し、研究及び行政において貴重な体験を積み重ねることができました。
 参事官として研究と行政の橋渡しの任にありました前任地(霞ヶ関)では、数々の緊急対応に遭遇しました。ことの対処に当たっては、先ずは科学的な根拠、なかでも基礎的知見の必要性を痛感するとともに、これを支える研究所の意義・パワーを強く感じたところです。
 今や21世紀も手が届く時代、これに向けて「新たな海洋秩序の下での我が国水産業の確立を目指した研究」が、研究の重点化として取り上げられております。これを押し進めるに当たっては、厳正な研究評価に加えて、納税者(国民)に対し、研究成果の適切な還元が大事なことと考えております。
 研究を進展させることは、いわばスパイラル(螺旋)の階段を昇るようなものであります。つまり、表で成果として見える時もあれば、醸成中にあって裏に隠れている場合もあります。時間を掛けてみますと必ず前進しています。これを昇るには、「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」(芭蕉:柴門ノ辞)の例えを引くまでもなく、先人の模倣ではなく、大事なことは先輩たちの精神に学ぶことでありましょう。
 将来にわたる水産業の発展や水産物の安定確保を図っていく上で、行政部門と研究部門とでは、そのアプローチ等において、時間軸が大きく異なりはするものの、相互理解の下に両者がそれぞれの持ち味を活かしていくことが何より大事なことと認識しております。
 世界の代表的なしかも寒・暖両流で囲まれた当混合域の海洋の特性を生かすため、さんま研究体制の整備、研究の活性化、東北ブロック水試等場長会との連携強化等を図り、外に対して当所の顔がよく見えるように、研究と行政の垣根を低くしたバリアフリーの下、海区における水産研究の中核的機能を研究、事務及び船舶の各部門が一体となって果たしていきたく思っておりますので、各位のご協力方をよろしくお願いします。
(10.4.1所長)

Yasuaki Nakamura

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