カツオ大回遊モデルを用いた回遊経路の推定

伊藤進一 1),小倉未基 2),田邉智唯 2),竹内謙介 3),野中正見 3)


 皆さんのよくご存知の日々の天気予報は数値モデルを使って出されますが、海の流れや水温・塩分などを求めるための数値モデル(海洋大循環モデル)もあります。今回の研究では、この海洋大循環モデルを用いて海の中の流れや水温・塩分の状態を求め、その環境の中で、カツオを泳がせ(カツオ大回遊モデル)、カツオ幼魚の回遊経路を推定したものです。カツオ大回遊モデルの中で、カツオは水温の低い方向へ向かうとともに海流に流されると仮定しました。この仮定をもとにカツオの幼魚期(1歳未満)の回遊経路を推定した結果、
1: 北緯15度でカツオの回遊をわける境界が存在すること、
2: 北緯5度付近にカツオが集まること、
3: 水深の違いにより集中北上経路の場所が変わること(水深が深い場合は黒潮沿い、水深が浅い場合は東経160度付近)
という特徴が得られました。
 カツオの幼魚は漁獲対象とならないため、その回遊経路が不明でしたが、今回のカツオ大回遊モデルの開発によって、回遊経路の推定が可能になったことは大きな成果だと思います。将来的には、標識放流結果とカツオ大回遊モデルを組合せて用いること(データ同化)によって、より高精度な回遊モデルの開発を行いたいと考えています。

参考:カツオ大回遊モデルの概念図

1)海洋環境部 海洋動態研究室,
2)資源管理部 浮魚資源第2研究室,
3)北大低温研

kiren@myg.affrc.go.jp

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