マイワシ仔魚日周鉛直移動の一観測例

松尾 豊・杉崎宏哉・横内克巳


 マイワシは多獲性浮魚類であり,資源が50-60年単位の長期変動することで知られている.大型別枠研究「農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する研究」の中で,マイワシ仔魚の鉛直分布とその変化について調べた.
 調査は1994年2月28日,東北区水産研究所所属若鷹丸により,黒潮の北縁に位置する点で行った(図1).マイワシ仔魚の採集は,目合0.35mm,口径56cmのMTDネットにより,水深0,10,30,50,100m層を水平に曵網するよう行った.曵網時間は水平曳30分とした.2月28日午前1時より開始し,日出時,日中(2回),日没時,夜間と行い,午前0時で終了した.ネットの開口部には濾水計を取り付け,曵網中の濾水量を求め,単位体積あたりの個体数に換算した.採集試料はアルコール保存したが、仔魚の状態が悪く,体長測定は行えなかった.
 本研究の結果より,マイワシ仔魚の日周鉛直移動について深度0m〜10mを表層,10m〜50mを中層,50m〜100mを下層と分けて推定すると,夜間から日出時にかけては中層に分布する.日中は表面に分布の中心が移動するが,日没時から夜間にかけて再び中層に移動すると考えられた(図2).このような昼夜鉛直移動は,カタクチイワシやイカナゴの仔魚でも報告されている.これは、昼間、捕食者の少ない表層に移動する生態的な意味があると考えられる.
(業績番号:556A)

松尾:海洋環境部 生物環境研究室長
杉崎、横内:海洋環境部 生物環境研究室

Yutaka Matsuo,
Hiroya Sugisaki,
Katsumi Yokouchi

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