青森県太平洋岸沿岸域における魚類相の季節変化

川端 淳


 本報では,沿岸漁業の漁場や稚仔魚の生育場として重要である青森県太平洋岸沿岸域において,船曳網を用いた毎月の採集調査を行い,出現する魚類及びいか類の種組成を明らかにし,魚類相の季節変化を因子分析で解析した.
 調査期間中採集されたのは魚類63種,いか類4種であり,各月の出現種数は採集個体数の比較的少ない3〜5月の低水温期に多く,逆に採集個体数は出現種数の比較的少ない8〜11月に多かった.各月の種組成は5から6月及び8から9月にかけて大きく変化し,1〜5月,6〜8月,9〜1月のそれぞれで比較的類似していた.
 出現した67種の各月の採集個体数の常用対数値をデータマトリクスとみなして因子分析を行った結果,3因子が得られ,親潮第一分枝,津軽暖流,表面水温をそれぞれ指標とする要因を表すものと考えられた.主な種は,各因子が推定した因子得点からみた出現状況と3つの要因との関係から,親潮あるいは津軽暖流の勢力が強く水温の低い時期に多く出現する種(イシカワシラウオ,シラウオ,アユ),親潮の勢力が強く津軽暖流の勢力が弱い時期に多く出現する種(ギンポ属,フサギンポ属,イカナゴ,ウスメバル,スケトウダラ,アナハゼ属),津軽暖流の勢力が強く水温の高い時期に多く出現する種(カタクチイワシ,マアジ,シロギス,ジンドウイカ,ワカサギ),津軽暖流の勢力が弱く水温の高い時期に多く出現する種(ウキゴリ,スルメイカ)の4つに大きく類別された.このように,この海域の魚類相の季節変化は,親潮の勢力,津軽暖流の勢力,水温の高さをそれぞれ指標とする3つの要因の季節変化に大きく関係する各々の種の出現状況の変化が組合わさったものであると考えられた.
 これらは沿岸漁業資源の動向を把握し管理する上での基礎的な知見となろう.
(業績番号:550A)
3つの因子が推定した各出現種の因子得点
八戸支所 浮魚資源研究室

Atsushi Kawabata

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