研報58掲載論文の紹介

暖水ストリーマ中の輸送生産

松尾 豊・横内克巳・稲掛伝三



 1991年10月に、三陸沖の暖水ストリーマ中で基礎生産と輸送生産の24時間観測を行い、ストリーマの生産性について研究した。暖水ストリーマは、周囲より水温が1〜3℃、塩分が0.1〜0.2高く、幅40km、厚さ40mで北に延びていた。基礎生産速度測定は、擬似現場法による溶存酸素法を用いた。輸送生産は漂流ブイから水温躍層直下へ垂下したセディメントトラップにより24時間の間に躍層以深へ沈降する粒状物を捕集することにより測定した。
 24時間観測中、暖水ストリーマ中のクロロフィル濃度は0.4〜0.6μg/l、硝酸塩+亜硝酸塩濃度は1μM以下であり、ストリーマ中はほぼ一様であった。また、クロロフィルを10μm以上、10〜2μm、2μm以下に分画すると、2μm以下のピコプランクトンが 55〜78%を占め、微小植物プランクトンが主体であった。
 擬似現場法により求めた暖水ストリーマ中の日基礎生産量は1平方mあたり303.09mgCであり、セディメントトラップより求めた日輸送生産量は1平方mあたり33.3mgCであった。これらの値は赤道域で得られた結果に類似しており、今回観測された暖水ストリーマが低い生産速度と高い栄養塩再生産率を有していることが明らかになった。

(業績番号:535A)

図1:漂流ブイとセディメントトラップの構成
図2:24時間観測中のクロロフィルの組成と量の変化
図3:擬似現場報による基礎生産の鉛直分布

松尾 豊:海洋環境部 生物環境研究室長
横内克巳:海洋環境部 生物環境研究室
稲掛伝三:海洋環境部 海洋動態研究室長


Yutaka Matsuo
Katsumi Yokouchi
Denzou Inagake

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