研報58掲載論文の紹介

三陸北部海域に来遊するスルメイカの資源動向と外套長組成の特徴

久保田清吾・川端 淳



 本報では,1963〜94年の32年に亘って収集した青森県八戸港に陸揚げされたスルメイカの生物と漁獲に関する情報をもとに,三陸北部海域に来遊するスルメイカの資源状況を推定し,資源水準の異なる4つの期間における外套長組成の特徴,成長傾向,群構造等を検討した。
 三陸北部海域に来遊するスルメイカは,その漁獲量変動から来遊資源が高水準の第1期(1963−69年),減少期の第2期(1970−75年),低水準の第3期(1976−88年),増加傾向の第4期(1989−94年)の4期間に区分された(図1)。資源水準が高い第1期には,外套長のモード値,平均値,変動係数等の特性値は安定していたが,第2期以降は増減の変動を繰り返し,不安定であった。主群である冬生れ群の外套長モードからみた9月以降の成長は,資源水準の低い第3期には資源水準の高い第1期に比べて1〜2p良好で,各期とも雌は雄より1p程度大きかった。外套長組成は,雌の外套長のモードと範囲が雄よりも大きい傾向が認められた。また,第一期は主群である冬生まれ群が大部分である単峯正規型が主体であったが,第2期以降は,冬生まれ群の大幅な減少のために顕在化した夏・秋生れの地方群である大型群や春生まれ群である小型群の出現により,双峯正規型,多峯型などの様々な組成が見られた(図2)。

(業績番号:541A)

久保田清吾:元 八戸支所 浮魚資源研究室
川端 淳:八戸支所 浮魚資源研究室
Seigo Kubota
Atsushi Kawabata

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