研報58掲載論文の紹介

金華山沖における深層流の直接測流

−1991年10月〜1993年10月の観測結果−


稲掛伝三



 北西太平洋における中・深層水の循環の実態を把握するため、金華山沖の水深約3000mの海底に係留系を設置し、400m、1400m及び2500m深付近の3層の測流を1991年10月〜1993年10月まで行った。設置位置は、1992年10月に回収・再設置した際に、北緯38度15.6分、東経143度31.6分から北緯38度36.4分、東経143度32.4分に移動した。
 2500m層の流速は、海底地形に沿った南南西もしくは北北東の流れが卓越し、流速の年平均は1年目(1991年10月〜1992年10月)が南西方向に1.7cm/s、2年目(1992年10月〜1993年10月)が0.6cm/sであり、金華山沖の深層では南西向きの流れが卓越していた。
 流速の南北成分は、−15.6〜+11.9cm/sの間にあり、冬季(2〜3月)および夏季(6〜8月)に南向きの流れの強まりが認められた。南向きの流れの強まりは、親潮第1分枝の南下が強まる時期(4〜5月及び8〜9月)の1〜3か月前に認められ、亜寒帯循環系の勢力の強まりとの関連性が示唆された。
 地衡流無流面として使われることが多い1500m層付近の流れ(測定深度1400m)は、年平均で1年目が南西方向に3.0cm/s、2年目が南向きに0.2cm/sであり、深層水の流れの影響が、1400m層の流速変化に認められる場合と認められない場合があった。このことは、深層水の中心位置が水平もしくは鉛直的に変化するものと示唆される。

(業績番号:537A)

:金華山沖の1400m及び2500m深における流速の進行ベクトル

稲掛伝三:海洋環境部 海洋動態研究室長


Denzou Inagake

目次へ