長谷川峯清

現所属神戸地方高等海難審判庁 審判官(平成8年4月1日〜)
前所属東北区水産研究所 若鷹丸 船長(平成4年4月1日)

 平成8年4月1日付けにて水産庁から高等海難審判庁に出向を命ぜられ、神戸地方海難審判庁に審判官として着任してからもう4ヶ月が経過しました。平成4年4月から4年間、“わかたか丸”及び“若鷹丸”に在職中は乗組員並びに東北水研の皆様にいろいろお世話になり本当にありがとうございました。
 “わかたか丸”に初めて乗船したときの、老朽化した船体や運航能力の低さ等に対する驚きと落胆が、その後代船建造に向かっての意欲と行動を発奮させるエネルギーの源泉になりました。“若鷹丸”が昨年3月に竣工してからの1年間は、この最新ハイテク漁業調査船を如何に使いこなすか、ということが念頭から離れず、まさに無我夢中の1年間でした。特に、少人数で、数多くの機械や新しい情報機器の操作を行いながら計画以上の漁業調査を完遂できたことは、乗組員のみならず東北水研の研究者及び事務に携わる方々全員が、“若鷹丸”を一流の漁業調査船にしよう!という意識のもとに惜しまぬ協力と努力を払った結果の賜物と思っております。
 今般、国連海洋法条約が批准され水産研究所に課せられた重責は如何ばかりか計り知れないものがありますが、東北水研並びに若鷹丸が今後ますますご活躍されることを祈念しております。
 ところで、私は、昭和46年に水産庁に入庁してからこれまで25年間、海洋水産資源開発センターの約4年間を含めて人生の半分以上を船乗り生活で過ごしてきました。今回の異動によって、この身にとって初めての陸上における単身赴任のサラリーマン生活を経験させられることになりましたが、予想以上に厳しい毎日が続いております。月曜日から金曜日まで、朝早く起きて朝食の準備、片づけ、出勤、勤務、帰宅、夕食の準備、片づけ、入浴、そしてやっと自由になったと思うともう夜中、明日のために寝なければ、という強迫観念の毎日が続きます。土曜日になるとホッとします。しかしゆっくりする暇はありません。1週間分の洗濯と掃除、食料品の買い物に出かけなければならないからです。日曜日は次の一週間の始まりです。ここにも目に見えない圧力が感じられるのは私一人だけではなく、単身赴任の皆さんが感じていることではないでしょうか。いずれにしても、この生活に早く慣れて、地方勤務の陸上生活をエンジョイしたいものと思っております。
 なお、任地は昨年1月17日に発生した阪神大震災の傷跡がまだまだ残っている神戸です。地震の大きさを物語るかのように、波打ってひび割れした道路という道路には補修跡が痛々しく残されていますし、そちこちにガレキが残されたままの空き地が目立ちます。とはいうものの、あちこちで復興の槌音が聞こえます。完全に復興するのも時間の問題でしょう。神戸に出張される際には是非ご一報ください。
 海難審判庁の仕事については、いずれ稿を改めて紹介する機会もあると思いますので本稿では遠慮させて頂きますが、海難事故は毎年1万件近く発生しておりますので、調査船を運航する機会の多い機関の方々におかれましては、くれぐれも事故を起こさないようお願いしたいと思います。
Minekiyo Hasegawa

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