「第6回海洋水産資源の培養に関する研究者協議会」に参加して

山崎 誠



 この協議会は、「海洋水産資源の培養」つまり水産増養殖に係わる日中韓三国の研究者による研究情報交換(技術や経験などの交流)と増養殖施設の視察を主な目的に、日本の海外漁業協力財団が主催し、3カ国持ち回りで行われて来ました(詳しくは、西海水研ニュース76号の輿石さんの記事をご覧下さい)。
 今回は大韓民国の国立水産振興院が主管となって、1995年11月3日から8日まで釜山を中心に開催されました。この協議会に、研究部参事官からの要請に基づいて研究交流促進法を使って参加しましたので、その概要を紹介します。
 日本からの参加者のスケジュールや行程は、表1図1をご覧になって下さい。
 今回の協議会は、「増・養殖場における漁場管理の現状と今後の方向」をメインテーマに、各国から6課題ずつの話題提供がありました。日本側の話題提供者と内容は表2の通りです。また、中国と韓国からの発表内容は、表3に示しました。中国側の一行は、協議会と現地検討会の全ての行動をともにしましたが、韓国の一行は協議会のみに参加される方が主でした。
 表に示した以外の参加者は、日本側が海野研一理事長、佐藤哲也技術顧問(副団長:元西海区水産研究所長)を始めとする海外漁業協力財団からの6名と大日本水産会からの1名で、中国側は趙 江中国農業部漁業局国際合作処副処長、韓国側は全 琳基国立水産振興院増殖部長。さらに、ソウル到着から現地検討会終了までを通じて韓国国内の案内役を勤められたのが、国立水産振興院の遺伝育種科長 金 潤さんと水産研究士の 朴 重淵さんで、お二人はどちらも日本での留学経験があり、日本語がとても上手でした。ちなみに、朴さんは3年前まで東北大学農学部の大学院に留学されていたそうです。
 さて、協議会の方は、日本語⇔韓国語⇔中国語の通訳が付き、ゆったりとした口調でそれぞれがお得意の分野の報告をされました。印象的だったのは、中国でも韓国でも開発(工業化・都市化など)が進むとともに、海洋の汚染が増えていること。中国では、90年代に赤潮の発生がかなり増加しており、これが養殖エビの生産量の伸びと並行している中で、エビ養殖場に魚類や藻類を混養することで環境の改善を図ろうとする研究の紹介や淡水域で開発された総合養殖システム(養殖種の相互利用や生産量を相互に促進させる生物学的関係を利用して、有機排泄物を有効に利用する良性循環システム)を海面養殖にも導入しようとする試み(二枚貝とコンブの混養など)の紹介がありました。また、韓国でも“複合養殖”の研究を手がけており、生産性を高めて漁業生産を安定的なものにするとともに、環境にも配慮した養殖業を確立しようとしています。さらに、韓国の研究者から、養殖場の自家汚染を改善するために、現場の環境データや養殖種の排泄物量などの生のデータと有機物の分解モデルや環境の物質循環モデルを使って、溶存酸素量を増やし環境を改善するためには養殖施設を何割削減する必要があるかと言った環境改善のためのシミュレーション・モデル作りを行っていることも紹介されたのが印象に残りました。環境問題とも関連しますが、私が担当している貝毒の分野でも、両国ともこれから大変だなという印象を持ちました。
 3箇所でのミニ・シンポジウムでは、韓国側から現地での研究や養殖業の実態が報告され、それに対する質疑が行われました。ここでは、ヒラメ養殖の実態を、代表的な築堤式と済州島での陸上養殖の見学を通して、多面的に知ることが出来ました。
 言葉の壁があってか、研究そのものでのお互いのディスカッションは余り進みませんでしたが、韓国料理や中華料理での豪華な夕食の度に、「乾杯(カンペイ)、乾杯(カンペイ)」と40度近い中国酒をかたむけ、「今度は青島(チンタオ)に来い」、「日本に来い」と交流の方はかなり進んだようでした。帰国してからも交流が続くとよいのですが・・・。
 日本との歴史的な関係が随所に見られた観光地の見学や名物料理のご馳走の数々なども、短い時間でしたが、満喫できました。事務局を担当された財団の方々、韓国の旅行社の添乗員の方や通訳の方々など、お世話になったたくさんの方々に紙面を借りてお礼を述べさせていただきます。

 (資源増殖部 増殖漁場研究室長)

Makoto Yamazaki

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