若鷹丸の機関部作業

磯崎三郎


 船が大型化されるのに伴い、各種機器の自動化が発展してきましたが、未だに人の手に頼らざるを得ない保守整備をしなければならない物が多くあります。
 はじめに、機関部が船と調査にどのように関わっているか知ってもらうため、若干説明したいと思います。
 本船では、調査に必要なウインチ関係の動力源、船内電力、船の推進、快適な船内生活のための空調装置、標本の冷凍保管のための装置、食料保管のための装置、各ポンプ類等、当然と思われる装置の制御や保守を行っておりますが、調査中には直接目に付くことがないので、なかなか機関部作業については理解できないものと思います。
 これらの機器が止まると言うことは調査が出来なくなるばかりか、船の安全にも関わってくるのです。このため、機関部作業としては、これらの機器が停止しないように心がけ航海中、停泊中に拘わらず毎日保守整備をしております。しかし、機械が意に反して止まってしまった場合には、機関部が一丸となって修理、整備、調整をすることになります。
 機関、機器の運転には省力化が進んでも、未だ保守整備に関しては人の手が必要です。稼働中の機器は整備が出来ないので、停泊中に作業しなければなりません。時間、人数が限られていますので、なかなか思いどおりに行きません。
 エンジンのご飯である燃料積み込みも大きな作業の一つです。貴重な予算で購入する訳ですから、海洋汚染防止法遵守のみならず、美しい海を維持するのために、一滴たりとも油をこぼす失敗が許されない中での作業は、とても気を遣い疲れる作業です。
 充分な調査、安全な航海、快適な船内生活のためにどうしても陸上支援が必要です。一時も早くメーカーとの保守管理契約を結び万全な状態で安全且つ充分な調査航海が行われる事を望みます。
 若鷹丸において定期的に行う機関部保守整備作業の一例を取り上げて見たいと思います。
 1.推進機関、発電機機関
  燃料噴射弁の交換、清掃、調整
  燃料ラインこし器の分解掃除
  弁腕油潤滑油交換、こし器掃除
  潤滑油交換、潤滑油ラインこし器分解掃除
  過給機潤滑油交換、ガバナ潤滑油交換
  給排気弁隙間調整、クランク点検、クランクデフ計測
 2.冷房、標本、糧食冷凍機装置
  潤滑油交換、ラインこし器掃除
  ベルト調整、交換、吸入フィルター清掃
  凝縮器分解掃除
  冷媒系統の漏れ点検、補給
 3.電力関係
  アース点検、復旧
  電気機器の修理点検
 4.機関室内に設けられた27台のポンプ、モーター
  ベアリング交換
  軸、軸シール、羽根車、口金の交換
  各ポンプライン、こし器分解掃除
 この他に減速機、可変プロペラ装置、船尾管軸封装置、海洋生物付着防止装置造水装置、温水ボイラ、カロリーファイヤー、油水分離器、廃油、固形物焼却炉、蓄電池、電力配電盤、発電機及び同期盤、非常用発電機等あげればきりがないので一度機関室を見学に来て下さい。

(若鷹丸 操機長)

Saburou Isozaki

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