若鷹丸の運航形態

榎木園正一


1.安全および衛生

 安全管理者・健康管理者である船長を筆頭に、各部に安全管理担当者、船員危害防止主任者、火元責任者、健康管理担当者を指名し安全運航を期している。

2.諸人員配置

 一般的な出入港配置・投揚錨配置の他に船員法に定められた非常配置表に従い、防水作業配置・消火作業配置・救助艇配置・救命筏配置・非常操舵配置・油防除部署配置を設けている。
 調査員その他の乗船者は乗船時、必ず上甲板通路壁に掲示されている各々の配置表を確認し、自らの配置を熟知して頂きたい。特に救命筏配置については自分の乗る乗船筏と搬出物品を確認することが必要である。

3.航海当直・調査観測作業体制と人員配置

(1)航海当直
 本船は水産庁の所属船舶の中では初めて高度機能集約型船橋システム(IBS)を採用し、甲板部・機関部・無線部の3部がすべて一つの統合管制室にて航海当直が行われている。
 すなわち、従来の船にあった機関当直室及び無線室を別途配置せず、統合管制室を航海・操船区画、海図・観測区画、ウインチ制御区画、機関制御区画、無線区画に仕切壁なしで区画割りし、当直者を航海船橋甲板に集中させ運航している。このため、各部間の意志の疎通が円滑となり、情報の即時伝達、調査・観測時の機敏な動作が可能となっている。
 また、船楼甲板上および機関室内には各4台の作業用監視テレビが設置されている。このため人員の配置・作業状況・機器の作動状況等の監視を統合管制室において集中的に行うことにより、安全運航を図っている。
 1)甲板部
 航海士2名、甲板部員6名で構成している。航海当直には船長が加わっている。
 0時〜4時(12時〜16時)、4時〜8時(16時〜20時)、8〜0(20時〜24時)の3直2交替制とし、各直は船長または航海士1名、部員2名の3名で1直4時間の当直を行っている。
 原則として調査・観測は各直で対応するものとし、統合管制室には見張り・操船に士官1名とウインチ操作に部員1名、甲板上にはクレーン操作に部員1名を配置している。しかし、甲板上でのクレーン操作のみではできない調査・観測の場合は調査員の作業協力が必要となる。
 2)機関部
機関長、機関士1名、機関部員4名で構成している。
 0〜4、4〜8、8〜0の3直2交替制とし、0〜4直は機関士と部員1名、4〜8直は操機長と部員1名、8〜0直は機関長と部員1名で1直4時間の当直を行う。統合管制室機関制御区画において、機関室等の見回り時を除き常時2名で機関制御を行っている。
 3)無線部
 無線部は通信長が08時〜12時、13時〜17時の間、1日8時間の当直を統合管制室無線区画において行っている。
4)司厨部
 司厨長と司厨員の2名により6:30〜18:00の間、途中休憩をはさみながら1日8時間の司厨部作業を行っている。少人数のパートであることから乗組員、乗船調査員等のできる限りの協力をお願いしている。
(2)トロール及び大型観測器具を用いる場合の作業体制
 トロール時及びモクネスネット(4u)等、大型観測機器を用いる観測作業の場合は、下記のような観測作業体制とし、各人昼間の6時〜18時の間、1日2時間のサービスワッチを行うこととしている。少人数稼働船として自動化・省力化がかなり図られているが、トロール等大型観測機器を用いる場合は安全を期するため、特に現場での人員不足および船橋での見張りが手薄になることからこの体制によることを余儀なくされている。

4.停泊当直

(1)定繋港(八戸港)の場合
 船長、機関長、一等航海士を除く15名が定められた順番に停泊当直を1人で行っている。当直1人体制は陸上電源の供給が前提条件となるが、現在は発電機をリースにより利用している。当直内容については各部の責任者が作成した見回り巡検箇所を熟知し、不測の事態や機器の警報が鳴った場合に対処するようしている。これが困難な場合は乗組員緊急連絡網を用いて各部の責任者に連絡し、判断を仰ぐこととしている。
 また、週休・年休等の消化のためには当直1人体制は不可欠であり、これができない場合は航海日数を現行よりも削らざるをえない状況になると思われる。
(2)寄港地停泊の場合
 原則として甲板部1名、機関部1名の2名により停泊当直を行うが、寄港地の治安情勢等により増員する場合がある。

5.船内外の美化について

(1)清掃区画の各部割当
 公室関係・便所・浴室・通路等を対象とした、乗組員による基本的な船内清掃区画をの通り割り当て、分担して行っている。
 調査員その他の乗船者については入居者が各居室を清掃することを原則としている。下船の際は必ず掃除機等を用いて室内を清掃し、使用した枕カバー・包布・シーツ等は折りたたんでベッドの上に置き、次の乗船者が気持ちよく入居できるように協力をお願いしている。
(2)ゴミの処分および焼却炉の運用
 原則としてゴミの処分は公室関係および通路を除き入居者が行うこととしている。
 各居室において発生したゴミは、司厨部にて用意したゴミ袋を用い可燃物と不燃物に仕分け、可燃物は各自焼却炉の横に設置してあるステンレス製ゴミ箱に運び入れ、不燃物は八戸港または塩釜港において陸揚げするものとし所定の収集場所に置くことにしている。
 空き缶は標本処理室に設置されている空き缶潰し機(カバちゃん)を利用して潰し、後日不燃物と一緒に陸揚げしている。
 また、生ゴミは調理室に装備されているディスポーザーを用いて処理している。
 可燃物のゴミ処理は焼却炉を用いるがその運用については甲板部、機関部、司厨部の3部による輪番制とし、各職長の話し合いで焼却当番を決めている。
(3)船内美化委員会
 甲板長、操機長、司厨長の各部の3職長で構成され、甲板次長、操機次長が補佐を務める船内美化委員会を制定している。
 同委員会は必要に応じて会合を開き、船内外の美化、清掃、整理整頓、ゴミ処理、焼却炉及び空き缶潰し機の運用等について協議することにしている。

6.衛生環境

(1)汚水処理装置
本船にはシャワートイレ室を含み6個の便器が設置されている。小便器はなく、すべてウォシュレット付きの洋便器である。各便器はソナードーム内にある真空収集装置と配管接続され、汚水はこれを通して真空収集された後汚水処理装置に送られ、そこで物理化学的処理による浄化後、船外へ排出される仕組みになっている。
 この汚水処理システムは、水産庁の船舶では初めて若鷹丸に採用されたが、悪臭もなく清潔で快適な船内生活の一つの要素となっている。
(2)浴室循環装置 “一番風呂”
 本船の浴槽はステンレス製で、浴室循環装置が装備されている。同装置は、浴槽の湯を循環中にその汚れを装置内に生息するバクテリアが処分することにより、10日以上でも浴槽の水を交換しなくても常にきれいな状態が保たれている。従って、いつ何時でも“一番風呂”に入った気分になれ、温泉気分を味わえる。また清水使用量もかなり軽減されている。

(若鷹丸 一等航海士)

Shoichi Enokizono

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