新規導入機器の紹介

全自動窒素炭素同位体質量分析計(ANCA-SL)

横内克巳


 この機器は、生体サンプル中の15Nおよび13Cを測定するために開発された卓上型質量分析装置です。乾燥させたサンプルをスズ製のカプセルに入れてシールした後、オートサンプラにセットし、コンピュータで識別します。装置が稼働状態になると、燃焼管中にカプセルが落とされ、同時に酸素がパルス的に導入されます。燃焼生成物はヘリウムキャリアガスによって還元管を通過し、精製されたCO2(またはN2)は質量分析計に送られます。質量分析計のシグナルは、コンピュータにより積分され、結果は13C(または15N)存在(atom%)および全炭素(窒素)存在比として出力されます。試料量の測定範囲は全炭素(窒素)が100μg〜1000μgです。精度は13Cで0.02%、15Nで0.05%です。質量分析計の使用目的は、海洋における基礎生産量の測定です。基礎生産過程は漁業資源を支える生物生産の出発点として重要であると同時に、海洋の表層で二酸化炭素を吸収し有機物を生成することから、地球環境問題を解く鍵となる分野でもあります。例えば、測定したい海水に少量の13C溶液を添加した後数時間培養を行います。培養水をろ紙にこし取って凍結乾燥し、質量分析計にかけます。天然の粒状有機炭素の13C存在比は1.1%であると言われていますので、培養時間内に増加した13C存在比から、植物プランクトンが摂取し有機物に変換した炭素量(基礎生産量)を測定します。

写真

(海洋環境部 生物環境研究室)

Katsumi Yokouchi

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