東北水研 研究報告57号掲載論文の紹介

標識放流から見たカツオの回遊について

−南下期を過ぎてからの移動経路−

渡辺 洋・小倉未基・田邊智唯


 最近の25年間に西部太平洋で行われたカツオの標識放流は,実に26万尾にも達している。もちろんこれには日本以外の国際機関で行われている調査活動も含まれているが,約半分は日本の各県水産試験場の調査船・水産高校実習船・民間漁船が行ってきたものである。ちなみに,同様に公海域を含む広範な水域で長年(35年以上)にわたって国際的に行われてきた北洋のさけます標識放流でも1魚種の標識放流尾数は最も多いシロサケで約14万尾程度である。さらに,このカツオ標識放流調査から得られた再捕は現在2万尾を超え,カツオの移動・回遊や成長の解明,資源解析におけるパラメータ推定等に極めて貴重なデータとなっている。
 本報告はその一例として,特に日本の近海で放流されある程度の時間が経過してから再捕された,37898尾の放流・358尾の再捕データを整理したものである。これにより,日本近海に来遊したカツオ資源の漁期後の動き,特に越冬期や最北上期に関する興味深い情報が明らかにされた。また,日本近海のカツオ資源とはるか沖合の天皇海山漁場の資源との交流が直接的に示された。

越冬後の再北上カツオ群の回遊模式図

渡辺:中央水産研究所 生物生態部長
(当時:資源管理部浮魚資源第二研究室長)
小倉:資源管理部 浮魚資源第二研究室長
田邊:資源管理部 浮魚資源第二研究室

(P 31-60 業績番号:516A)


You Watanabe
Miki Ogura
Michiyuki Tanabe

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