東北水研 研究報告57号掲載論文の紹介

わかたか丸ADCPにより得られる流速誤差の評価

清水勇吾・安田一郎


 船長はじめとする乗組員の方々の御協力のもと、今はなき旧船わかたか丸(174トン)に備え付けられていたADCP(ドップラー流速計)システムにより、ほとんどの調査航海毎に海洋流速データが取得され蓄積されました。流速データの処理法および誤差は、その船が用いているADCPシステムに大きく依存することが多いのですが、本研究は、わかたか丸ADCPシステムにより得られるデータの処理の流れと最終的に計算された流速値の誤差の評価の例を示したものです。わかたか丸ADCPシステムで得られる流速値に最も悪影響を及ぼすのは、GPSによる船速誤差であることが判明しました。
 Fig.1は、1992年5ー6月にわかたか丸で黒潮続流域の海洋観測を行った時の20m深のADCPの流速分布です。各流速ベクトルは必要な補正を施した後、1時間の移動平均を施したもので、この処理を行った時の各流速の誤差は、14cm/S(約0.3ノット)と見積もられました。
 本研究により見積もられた処理後の流速値の誤差の大きさは、黒潮、親潮、暖水塊といった水平幅が割と広い海洋現象の流れを見るのには十分な精度があると思いますが、水平幅数kmの細かな流速変動を見たり、数cm/sの流速誤差が効いてしまうような高精度の解析にこれらのデータを用いるのは避けたほうがよいでしょう。いずれにせよ、どのような研究にしてもデータの信頼性は常に問われるわけですから、私を含め、わかたか丸ADCPデータを用いる人が、これらのデータを用いて海洋のさまざまな現象の解明をするために、本研究が1つのステップになれば幸いです。

清水:海洋環境部 海洋動態研究室
安田:北大院地球環境

(P 15-24 業績番号:514A)


Yugo Shimizu
Ichiro Yasuda

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