東北水研 研究報告57号掲載論文の紹介

陸奥湾に来遊するマダラの孕卵数

服部 努・桜井泰憲・島崎健二


 マダラ(Gadus macrocephalus)は,北日本周辺海域において重要な漁獲対象種であるが,その繁殖生態についてはほとんど明らかにされておらず,孕卵数についても十分な知見が蓄積されていない。そこで,既住のマダラの孕卵数に関する知見を収集・整理するとともに,マダラの主要な産卵場である陸奥湾に来遊したマダラの孕卵数を調べ,既住の知見と比較検討した。
 重量換算により推定した孕卵数と体長の関係を調べた結果,被隣体長(以下体長と呼ぶ)600mmの個体で約180万粒,700mmの個体で約280万粒, 800mmの個体で約400万粒の孕卵数を持つことが明らかとなり,成長に伴い孕卵数が体長の約3乗で増加することが示された(図1)。また,相対孕卵数 (孕卵数/体重)は約550粒と個体間でのばらつきがあるもののほぼ一様な値を示した(図2)。
 以上の本研究で得られた結果と既住の知見を比較したところ,陸奥湾に来遊するマダラの孕卵数とカナダ西岸(Thomson 1962)のものとの間には大きな差異は存在せず,マダラにおける再生産能力の海域間差異は,海域間における体長−孕卵数関係の差異よりもマダラで知られる成熟体長と成熟雌魚の体長モードの差異によってもたらされ,マダラ繁殖群の生息海域への適応の結果もたらされているのであろうと推測された。

服部:八戸支所 底魚資源研究室
桜井,島崎:北海道大学 水産学部

(P 1-2 業績番号:512A)


Tsutomu Hattori
Yasunori Sakurai
Kenji Shimazaki

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