着任の挨拶

月舘潤一



 3月16日付けで、水産庁研究部から東北区水産研究所へ配置換となりました。東海区水産研究所を振出しに昭和44年に南西海区水産研究所に換わり、研究所生活30年を送ってきました。東北区水産研究所は初めてですが、サケの別枠研究、マリンランチング計画研究や指定試験研究などの調査研究にも携わってきましたので、親近感を感じておりました。
 このところ地球環境問題などから生態系の解明やその維持管理に論議が広がっておりますが、自然保護の考え方や流れを見ると、単なる保護から保全へ、さらには持続可能な開発へという方向をたどって来たように思います。漁業は自然の生産物を利用しており、これで我々の生活がなりたっているところがあります。これを自然破壊と捉らえるのではなく、人間の生産活動と自然生態系の関係をいい状態に保っていくことを考えなければなりません。このため、人文社会学系と自然科学系との共同研究が重要になりますし、新しい考え方が必要になりましょう。
 当研究所が担当する東北海域には、黒潮や親潮の変動にともなって発生する暖・冷水が潮境を形成する混合水域があり基礎生産力が大きく、マイワシ、マサバ、サンマ、カツオなどの索餌海域となっております。また、沿岸域にはリアス式海岸や小湾が多数存在し、古くからノリやカキの養殖が行われ、さらにはワカメやホタテガイの養殖生産も伸びており、最近ではコンブ、マツモ、アサリ、ギンザケなど養殖対象種が増えてお ります。また、最近の我が国の水産業をめぐる情勢 (すなわち200海里体制の定着)に加えて、公海域における漁業規制が一段と強化され、我が国の周辺水域においては、資源状態は底魚類を中心に総じて低水準にあり、漁村における生活環境は立ち後れており、漁業従事者は高齢化が進むと共にその数は減少しています。これらの状況に対応して、当研究所は平成6年度に新しい研究基本計画を策定し調査研究を進めていくことにしております。
 当研究所の長い歴史の中で蓄積された研究成果を財産に、海洋生態系の保全、持続的生産といった環境問題からの視点も加えて、水産業の健全な発展に資する調査研究を実施し、さらには新しい漁村文化の創造に も寄与して、漁業生産と遊漁など親水性レクリエーションとが共存するような産業形態を模索していく必要があると考えており、水産研究所の責任の重さを感じております。今後とも皆さんのご支援・ご協力をお願いします。

(所長)

Jun-ichi Tsukidate

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