表紙写真の説明

杉崎宏哉



 黒潮で生まれ、黒潮および黒潮続流に沿って本州東方までやってきたマイワシの仔稚魚がその後、どの様な運命をたどるのかを調べるために、毎年4、5月に、鳥取県立境水産高校の若鳥丸を用船して、本州東方の沖合の 広い海域で採集調査を行っています。採集には稚魚ネット(口径130cm、目合450μm)と呼ばれるプランクトンネットを用い、網口がちょうど水面に隠れる程度の深さを船の舷側から曳網します()。10分間曳網した後、ネットを回収すると、各種大型動物プランクトンに混ざって、マイワシやサンマの仔稚魚が採集されます。船上では細かい処理をすることはできないので、採集した試料は速やかにさらしでできた袋に入れ()、そのまま 90%エチルアルコールに漬けて研究室に持ち帰ります。持ち帰った試料からマイワシを抜き出します。この試料を用いて分布、個体数、誕生日等を調べ、マイワシ仔稚魚の成長に伴う移動経路、捕食などによる減耗量の解明などの生態研究をしています。
 今年の調査では、シラスと呼ばれるマイワシの仔魚の段階(左)から、カエリなどと呼ばれる親とよく似た色彩と体型に変態した稚魚(右)の段階に至るまで連続した成長段階の個体が本州東方沖の黒潮続流からその北側の海域で多数採集され、沿岸魚として知られるマイワシが沖合域で成長していることが確認されました。

(海洋環境部生物環境研究室)

Hiroya Sugisaki

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