新任の挨拶

着定・変態

關 哲夫



 4月1日付けで採用され、藻類増殖研究室に配属になりました。退職するまで24年間勤務した財団法人かき研究所では貝類種苗の生産技術の研究が中心でしたが、今度は岩礁域の海藻と植食動物の相互関係を明らかにしていく研究が課題となります。これまでは貝類という動物に視点の中心をおいていたので、岩礁域では海藻が主役であることを知る機会に恵まれたことを嬉しく思っています。多くの海藻が動物の捕食を免れるために化学物質によって身を守っていることや、逆にサンゴモが植食動物を引きつけ他の海藻が繁殖することを妨げている例が谷口室長の研究グループで次々と明らかにされており、生態学分野のホットな話題が抱負です。私はこれまで実験施設の中でアワビ幼生が示す生態や行動を明らかにしてきましたが、天然のアワビ幼生の生態に接する機会はほとんどありませんでした。このためか、アワビやウニの幼生が海の中を遭遇する海藻から様々な影響を受けている事実を明らかにすることに新鮮な興奮を感じます。今後は、海藻の側の視点で動物を眺める立場を加え、より全体的に生態学的理解を得ていくことを目標にしたいと思っております。
 私は長い間民間研究機関で“浮遊”生活をして藻類研究室に遭遇し“着定”しました。この基盤の上で是非とも変態をとげ研究者としての生態になりたいと念願しております。どうぞよろしくお願いします。
(資源増殖部藻類増殖研究室)

Tetsuo Seki

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