退官の挨拶

久米 漸



 研究公務員として最後の2年間でもある東北区水産研究所長の任期が足早に過ぎ去りました。東北水研を去るにあたって心残りの点が多々ありましたが、新所長を中心にさらに時代に即した良い水研が展開していくものと思っています。
 環境問題との関連、国際的な漁業の位置付けの変化、我が国の社会的な水産物に対する需要の変化などの水産業それ自体に対する基本認識が変化してゆく大きな流れの中で、試験研究の果たすべき役割も変貌しつつあるのが現状ではないかと思います。在任中に、予想より早くしかもかなり大型化する形でわかたか丸の代船建造が認められ、これからの時代に即した試験研究の展開を早める上で大きな期待が持てるようになったことは一番印象に残っております。また、東北水研とは直接的には係わりがなかったけれども亜熱帯水産研究を目途とした西海区水研の石垣支所および国際共同研究のための国際農林研究センター水産部の設置にみられる水産研究所の組織体制の変化があり、宮城県の新研究施設による研究体制の改組などをはじめとするブロック内各県の組織体制の見直しが進んだ時期でもありました。この点、東北水研の施設および組織体制の現状がこれでよいのか気掛かりでしたが、急な改善と変革は求めようがなく、今後のこととして見守っていかざるを得ないと思ったものです。
 日本周辺水域の、とくに東北海域の海の豊かさを背景に自然の海洋生態系と調和をとりながら生態系活用型の産業として水産業の存続を図るという視点から、東北水研がブロックの試験研究の核として名実共に発展することを期待いたします。

(元 所長)

Susumu Kume

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