渡邊良朗


 高校までを岐阜県で過ごしたので、夏の暑さは分っているつもりでしたが、北海道、東北での20年あまりの生活で、私の体はすっかり寒冷地仕様になっていたようです。東京の暑さは想像以上で、この夏をどうやって乗り切ろうかと眠れぬ夜に思案しています。
 4月1日付けで中央水研に転任し、3カ月あまりが経ちました。東北水研での9年間は、私の水産研究に対する考え方が形造られた時期でした。サンマを対象にした研究の中で、フィールドと実験室との連携、漁業から独立した資源評価、水試との協力関係等についていろいろと試行錯誤を繰り返し、水研での研究を考える基本的な視点が定まったように思います。その意味で東北水研で学んだことが、私のこれからの研究の指針となるように感じています。
 着任した初期生態研究室では、浮魚類などの卵期、仔稚魚期の生態と個体数変動を研究することになっています。現在はマイワシの卵期死亡率推定法の開発や、産卵量と加入量とを関連づけるための北上シラスについての解析などを2人の室員とともに進めています。
 街でお相撲と行き合って思わず振り返る時や、都庁舎の異様な雰囲気に圧倒されそうになる時、東京に来たんだなと実感します。この夏をなんとか乗り切り、魚類の初期生活研究の進展に少しでも貢献できるよう勉強しなければと、気持ちを引き締めています。

(中央水産研究所生物生態部初期生態研究室長)

(Yoshirou Watanabe)

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