永沼 璋


 平成4年3月31日付をもって、東北区水産研究所を定年退職いたしました。顧みれば、昭和24年10月東北水研に入所以来、40数年間に亘って所の皆様をはじめ、各関係機関の方々からの公私にわたるご指導、ご鞭撻をいただき無事に職務を終わることが出来ましたことは、偏に皆様のご厚情によるものと深く感謝いたしております。心から厚く御礼申し上げます。
 この間を振り返ってみると、カツオやサンマの生物調査のために三陸の各港や静岡県焼津・清水港の魚市場を早朝から駆回っての調査、船酔しながらの海洋観測、地方公庁船や実習船による中南方海域におけるカツオの標識調査などでの数々の体験も、今は楽しい思い出として懐かしむと共に、第二の人生の貴重な糧として役立てていきたいと考えております。ところで、私が携わってまいりましたカツオの研究では、西部太平洋のかつお資源は比較的安定した状態で推移してきましたが、かつお漁業の変遷をみると、日本主体であった竿釣漁業の時代から南方まき網漁業の開発に伴って日本をはじめとして各国のまき網船団が競合しながら漁獲を競う国際漁業に大きく変貌し、漁獲量も飛躍的な増加を示しています。しかし、その一方で、近年の日本近海や南方海域における竿釣漁業の漁況にみられるように従来とかなり異なる現象を示しており、漁業の将来への不安な一面を覗かせているように思われます。日本の遠洋漁業が諸外国からの圧力の中で次々と壊滅的な状態に瀕している現在、水産研究所への期待と要望も益々大きくなるものと考えられますので、どうぞご健康に留意されて、さらなる研究の発展をお祈りいたします。

(前 資源管理部浮魚資源第2研究室長)

Akira Naganuma

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