原 素之


 新潟へ移り住んで3ケ月、新しい環境にも大分慣れてきました。とはいえ、研究対象生物が貝類から魚類へと変ったばかりでなく、実験室中心の研究からフィールド調査になった戸惑いは大きく、また日本海は同じ日本とは思えない程海の様子が違い、これから何をどのように取り組むべきか思い悩むばかりです。
 塩釜では自立し仕事を行っていたと思っていました。しかし、実際はアワビの神様、サンマの神様やら諸々の神様がその時々に水研の社会的役割や研究の位置付けを気付かぬうちに啓示して下さり、その中で動いていたような気がします。これは転勤により初めて気付いたことで、引越しの煩わしさや今までの研究を中断せざるを得ないこととの引換えに得られたものの1つなのかもしれません。
 今、目の前に見える風景は坦々とした砂浜と水平線まで見渡せる広々とした日本海、あの変化に富んだ美しい松島湾とはかなり違います。研究と言う目で見ると、日本海は歴史の浅い海であるがために種分化や進化遺伝学の点で面白い材料があり、また東北の海とは全く異なる種類の生物に取り組めると言う新鮮さもあります。今後は日本海にもいるだろう神々の話に耳を傾け、研究の方向性を決めて行きたいと思っています。
 東北海区での14年間に多くの方々と出合い、たくさんの教えを受け、温かい心にふれ、多くを語り合ってきました。長い間大変お世話になりありがとうございました。今までの経験を心の糧として新しい職場に活かしていけたらと思っております。最後に、東北水研、東北ブロックの各県職員、漁協の皆様がますます御活躍され、そして東北の海がますます豊になるようお祈りしております。

(日本海区水産研究所資源増殖部魚類増殖研究室長)

(Motoyuki Hara)

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