上海での見学先

中国国家海洋局東海分局

 1965年に設立し、職員数は約1700人である。主な任務は、北は江蘇省連雲港から南は福建省の台湾海峡に至る海域における海洋調査・モニター、科学研究、予報、汚染観測、海洋法遵守の指導・監督、海洋行政の調整などである。25ヶ所以上の水理気象観測所および「実践」号(2400トン、1965年建造)、「向陽紅10」号(1978年建造)、「向陽紅16」号(1980年建造)はじめ13隻の調査・監視船を有する国家海洋局の3地方分局の一つで、第二海洋研究所とは協力関係にある。
 内部の大きい組織である環境監視センターには96人の職員がおり、うち70%が技術関係者である。担当海域(連雲港〜福建省)における海洋汚染観測を行い、生物・科学・地質学的側面から環境評価と管理を行っている。1990年から新たに放射能の観測も行っている。国家海洋局では2機の飛行機が180日間稼働して、三つの分局が順番に空からのリモセン観測も行っている。
 近年赤潮の発生頻度が増加して、養殖エビに被害が出ており、ますます拡大沖合化する傾向にあり、赤潮の調査と研究に力を入れている。

中国水産科学研究院東海水産研究所

 中国農業部に所属し、東海の漁業生産発展のために、1958年に設立。1 海洋水産資源、2 海洋漁労、3 水産品加工、4 海水養殖、5 漁場環境、6 水産科学・技術情報、7 魚類学の7つの研究室および3隻の調査船、海水養殖試験場、漁具模型試験水槽を有する水産に関する試験研究機関である。調査船のうち1隻は日本の金指造船で建造した「東方」である。職員数は約40名、うち技術系は221名(高級科学技術員:31名、中級:105名)である。研究の柱は海洋漁業の開発や関連科学に関わる応用研究で、特に沖合・遠洋漁業資源研究、漁具・漁労技術開発、漁業用新素材研究、水産品栄養・鮮度保持など加工研究、魚類学研究などに力を入れており、成果は所刊行の「海洋漁業」と「現代漁業情報」に報告されている。急を要する具体的課題はマイワシの資源研究とこれに関する鮮度保持、加工技術開発の研究であった。1982年から黄海・東海の漁海況速報が発行され、漁場の予測がマップ上に記されている。本速報に対する関係者の反応は好評とのことであった。よく整備された魚類標本と漁具漁法展示室および図書館と漁具試験用の水槽(90mL×6mH)と円形水槽(直径6m)を見学した。
 東海における資源の状況については、1960年代にタチウオとイシモチなどを多獲したが、その後減少したままで、この減少の原因は漁獲圧力と海洋汚染が考えられていること、その中で、1980年代には種組成の変化が激しく、近年ではタチウオ、ウマヅラハギ、エビなどが多いとの説明を受けた。

上海自然史博物館

 270人の研究者がおり、動物、植物、地質、天文、人類、古生物の六部門をもっている。建物はイギリスの商館を利用して、1954年に創立した。現在、オーストラリアのヴィクトリア博物館と共同研究している。一般の展示室のほかに沢山の標本を有しており、魚類の標本を中心に見学と講演の機会を得た。