青島での見学先

第一海洋研究所

 1964年に設立。研究者数は約500名で、うち上級研究員が約132名、中級研究員は約240名である。7つの研究室(物理、海岸、海岸地質、港湾、海洋遥感、海洋化学、海洋生物、地流体力学)と2つの研究支援室(総合技術、情報資料)がある。
 重要な調査研究活動として、1.大陸棚域の環境調査 2.沿岸帯の開発利用 3.港湾、石油開発などの技術サービス 4.環境保全 5.熱帯域の大気海洋研究(TOGA)やJRKなどの海洋研究と南極調査 6.海洋資源調査 7.新しい海洋技術の応用などがあげられる。これらの活動を通じて、280名以上の研究員を外国に送りだし、20ヶ国以上から訪問者を受入れ、国際共同研究にも力を入れている。主な研究グループは南極、黒潮、微生物、資源の4つである。黒潮研究(責任者:孫湘平氏)の研究者数は22人である。第一研究所の黒潮研究は1983年から始まり、1983〜1985年の3年間に東シナ海の全般的な調査を行い、1986年からJRKに結びつけた。今まで、8年間の調査経験をもち、1989年11月開催された日中黒潮シンポジウムでも8人の話題提供者を出しており、中国でも中心的組織である。調査海域は当初東シナ海〜黒潮続流域であったが、2年前から主要海域を東シナ海にしぼり、対馬暖流の生成と黄海暖流に焦点をあてて調査研究している。
 海洋生物研究室には42名の職員がいて、うち30名の研究者が4つのグループ(生産力、微生物、海洋資源、南極調査)にわかれている。この研究室では、隣接している青島海洋大学の修士課程(3年間)の5人の学生の指導を引受けている。黒潮研究のほかに渤海における赤潮調査や沿岸内湾域における生産力研究などにも力を入れている。

国家海洋局北海分局

 1965年設立。職員数は約1800人で、このうち約1/3以上が中級以上の研究員である。この組織には海洋環境観測中心、情報局、海洋予報中心などの組織があり、北は鴨緑江から南は連雲港までの主として渤海・黄海と東海の北部海域における海洋調査、モニター、科学研究、予報、汚染監視、海洋法遵守の指導、監督、海洋行政の調査などを任務としている。また、南極調査にも関連している。24ヶ所の海洋站(水理気象観測所)と15隻の調査・監視船を所有している。TOGA(熱帯大気海洋研究)や揚子江河口域調査(中・米)などの国際共同調査研究に参加した。

北海分局小麦島海洋站

 北海分局にある24ヶ所の海洋站の1つで、青島の郊外に在る。1989年11月から自動観測システムが導入された中心的観測所である。職員は17人(12人技術職員、5人事務員)である。
 2個のデータブイが約60海里沖に設置されており、水温、気温、気圧、風力、風向、波浪(波高)のデータをテレメーターで受信している。小型ブイは、沿岸に数多く設置されている。観測項目は水温、潮位、塩分、波浪、気温、湿度、風力、風向、降水量、気圧であり、3時間毎にデータをコンピューター入力して北海分局を経由して北京の海洋環境予報中心へ送付している。いかにも中国らしい建物のこの站は総合的な気象と海洋の最前線の観測機能をもっている。日本人の訪問は初めてとのことであった。日本ではこのような総合機能をもつ施設はなく、参考になると考えられる。

黄海水産研究所

 1947年に上海に創立。1949年に青島に移り、中国水産科学研究院に所属し、1960年頃に上海に東海水産研究所および広州に南海水産研究所が創立したので、3海区に分けて水産研究を行い、その中で中心的役割を果している。日本の西海区水産研究所とは時に底魚、浮魚資源と増殖関係で交流している。
 職員は約425名で、うち、研究員約267人(高級研究員57人、中級研究員119人)、事務職員 27人、船員87人、技工44人である。調査船は「北斗」(1,165トン)と「黄海」(378トン)の2隻である。
 7つの研究室(海洋漁業資源、海産蝦類増養殖、海産魚貝類増養殖、海産植物養殖、漁業環境、海洋漁労技術、水産品加工技術)と水産科学情報室で構成されている。
 資源研究については、タチウオ、サバ、ニシン、サワラ、キグチ、クルマエビなどの資源状況と漁況予報を行っている。漁況予報は漁場、漁期、漁獲量について対象種毎に1回発表している。漁場形成以後は魚群の移動ついて情報を出している。
 漁場環境については、黄・東海で環境保全(漁場の汚染)の基礎研究を行い、近年赤潮研究に力を入れている。赤潮は1979年頃から発生しはじめ、7〜8月頃を中心に数年来多くなり、渤海で最も多発し、被害も出ている。出版物は「海洋水産研究」が年1冊刊行されている。

青島海洋大学

 1958年に山東大学が済南へ移転後、海洋学部が昇格して山東海洋学院となり、1988年青島海洋大学と改称した。海洋学関係では世界唯一の総合大学である。中国教育部に所属し、学生数は約4,000人、男女比は3:2であるが、生物部門では女性の方が多い。9学部16学科(70研究室)で構成され、学部(4年)と修士課程(3年)を有している。教授約20人、副教授約100人、講師約380人の教師陣がいる。中国の海洋研究者の50%以上を送りだしており、厦門大学とともに中国海洋教育および研究の中心である。海洋調査船は「東方紅」(2,700トン、1960年建造)を有し、現在1隻建造中である。海洋生物学部の学生数は約400人で、52人の教官と22人の修士課程の学生がいる。5つの課程(微生物・プランクトン・ベントス・遺伝・生態学)がある。