中国の国家海洋局の概要
- 国家海洋局本部(北京)
国家海洋局全体をとりまとめる中央組織で、10の内部部局を有し、国家南極考察委員会・国家科学技術委員会・海洋事業部会・中国海洋学会などもこの組織下にある。また、海洋法会議への対応も行っている。
- 地方分局
北海(青島)・東海(上海)・南海(広州)に3つの分局があり、各々渤海〜黄海、東シナ海、南シナ海を担当海域として、海洋調査や汚染監視などを実施している。
国家海洋局の海洋調査船は各分局で運航されており、北海分局にはJKRに参加している「向陽紅09」号(4,435トン)のほか、1200トン級の「向陽紅07」と「向陽紅08」号、800トン級の調査船2隻、300トン級の油汚染監視船4隻、50トン以下の沿岸調査船6隻の調査船が配置されている。東海分局にはJKRに参加して有名な「実践」号のほか、「向陽紅10」号と「向陽紅16」号などが配置されている。
そのほか分局には、環境観測センター(汚染観測)、海洋予報センター(海況予報)、海洋站(沿岸の水理気象観測)の組織がある。これらの所で得た観測データは、リアルタイムで海洋環境予報センター(北京)へ、ノンリアルタイムには海洋科技情報研究所(中国海洋データセンター)(天津)へ送付されている。
- 研究所
- 海洋研究所
第一(青島)・第二(杭州)・第三(厦門)の海洋研究所があり、渤海〜黄海〜東シナ海〜南シナ海の調査研究を行っている。研究所は年に数回、各分局の海洋調査船を利用して研究航海を実施しており、毎年日本にも寄港している。「日中黒潮共同調査」では海洋研究所が主体的役割を果しており、地方分局が支援する形をとっている。その中で、第一と第二研究所が主に関わっており、第三研究所は補完的な役割に終っている。
- 海洋科技情報研究所
天津に所在し、中国海洋データセンターとして国内外の海洋データおよび文献を一元的に収集管理し、データ集・図集・潮汐表・潮流表などを刊行するとともに、文献の検索・提供サービスを行い、国際海洋データ交換システム(IODE)の国立海洋データセンターとして、データと文献の国際交換業務を行っている。
- 海洋技術研究所
天津に所在し、海洋調査機器、海底係留システム、石油プラットホームの環境監視システムなどの海洋研究と開発に必要な各種機器の開発を行っている。この研究所から独立をして、「海洋標準計量センター」の設立が1991年3月現在計画中である。
- 海洋環境保護研究所
大連に所在し、海洋汚染物質の分析技術、汚染物質の拡散・沈降過程、環境容量、自浄作用、生態学への影響評価などの環境保持に関する総合的な試験研究を実施しており、特に海底石油開発の盛んな渤海を重点海域として活動している。
- 海水淡水化総合利用研究所
天津に所在し、海水の脱塩技術、濃縮分離技術、海水中の化学資源の抽出技術などの海水の総合利用に関する研究開発を実施している。
そのほか、研究所には海洋発展戦略研究所(北京)や中国極地研究所(上海)がある。
- その他の傘下組織
- 海洋環境予報センター
北京に所在し、各地方分局の予報センターから送付されるデータを収集し、水位、波浪、高潮、海上気象、海氷などの通報と予報サービスを行っており、全世界海洋情報サービスシステム(IGOSS)の国立センターとしての役割も果している。
- 寧波海洋学校
国家海洋局の中堅職員を養成する機関として寧波に所在する。
そのほか、出版と報道を担当する海洋出版社(北京)と中国海洋報社(北京)がある。