陸前から越後へ

平井光行


 このたび、4月1日付けで日本海区水産研究所海洋環境部に転任しました。東北区水産研究所在任中の約12年間には、東北ブロック水産試験場はじめ関係機関並びに東北水研の先輩・同僚諸兄から温かいご指導をいただき心から感謝しています。
 さて、転勤となると少なからず煩わしさを伴います。5人家族の私にとっては引越しひとつとってもやっかいであるし、12年間の仕事の整理・引き継ぎはそう簡単ではないようです。仕事が遅いため未整理の資料を多くかかえ新旧のいずれの職場にも迷惑をかけたりします。フィールドに目をやると、大きな企業経営体の多い三陸の海と零細な沿岸漁業者の多い日本海とでは漁業形態が異なるし、東側に境界のない三陸の海と地中海的縁辺海の日本海では海流のふるまいも異なれば気象や地形の海況に与える影響の度合いも異なります。文献を洗い直す必要がでてきます。
 しかし、転勤することによって得るところもまた多いように思います。新しい環境で新しい人と新しい立場で話すためにこれまでの仕事を振り返り、その中から新たな研究の視点を探そうと努力します。よく、「風邪はあとにひくほどひどい」と言われますが、転勤にも風邪の菌のハイブリットと共通する柔軟性が培われる土壌があるのかも知れません。新しい環境のもとでこれまでの研究の継承と同時に新鮮な刺激剤になれば幸いです。
 新築になったばかりの日水研の海洋研究棟の2階に荷を解いてはや3カ月。人それぞれ与えられた環境があり画一的に転勤を論ずるつもりは毛頭ありません。縁あって、陸前から越後へ来る機会が与えられたからこそ、陸前で得たものの多くを越後に運び入れたいと思います。
 今後ともご指導・ご鞭撻のほどお願い致します。
日本海区水産研究所海洋環境部海洋動態研究室長

Mitsuhiko Hirai

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