渡部泰輔



 水産生活最後の5年間を東北水研の資源部と企画連絡室で有意義かつ楽しく過ごさせていただきましたことは、ひとえに皆様方の温かいお心遣いがあったればこそと深く感謝いたしております。
 企画連絡室から眺めた松島湾の美しい景色は、なぜか東北水研でのいろいろな出来事と重なって、今でも脳裏に焼き付いています。春は早春のやわらかい日差しをうけた松島が好きです。調査船の入出港、新緑の頃の松島とカツオの予報。夏は夕暮れの頃の松島とサンマの予報、加工団地から漂う香り。秋は月夜の松島と紅葉の頃のバス旅行。冬は雪の松島と調査船の入出港に会議と思い出はつきません。
 ところで私の研究の大半は、調査船による産卵調査から得られた発育初期の生態・資源に関するものでした。マイワシ資源が低水準から高水準に達するまでの約30年間、多獲性浮魚類の資源変動を調査船への乗船を通じて肌で感じながら研究できましたことは、今になってみれば大変幸せであったと思っております。申すまでもなく東北海域は、豊かな漁場であるとともに、漁獲、再生産、発育初期の生き残りの過程を通じて、資源変動機構解明の鍵を握る海域であります。調査船に乗船することがなくなって既に5年を経過しましたが、先進的研究への閃きはフィールドに出ている時にこそ得られるものであることを痛感しております。これから経過するであろうマイワシ資源の減少とサンマ、マサバ等多獲性浮魚類の資源変動とがどのように関わっているのか、そのメカニズムを時期を失することなく解明されることを祈ります。
 そのためにも大型調査船が一日も早く東北水研へ配備されることを念願いたしますとともに、皆様の研究の発展を心からお祈り申し上げる次第です。
 東北水研の皆様には、長い間本当にお世話になり、どうもありがとうございました。
Yasusuke Watabe

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