奥田邦明

六年を振り返って



 私が選考採用で東北大学から東北水研に入所したのは昭和59年の4月で、以来、丸6年間お世話になりました。学生の頃からずっと大学で過し、組織の一員として業務や研究プロジェクトに携わるという経験が皆無でしたので、最初は勝手が分からず、戸惑ったり同僚や先輩方にご迷惑をおかけしたりする事が多かったのですが、東北水研、特に海洋部の気取らない、ざっくばらんな雰囲気の中で、一人悶々と悩むこともなく、忙しくかつ楽しく6年間を過ごさせていただきました。この間お付きあい下さった方々に改めて心よりお礼申し上げます。
 私が入所した昭和59年は恐らく海洋学の歴史に残る年になると思います。もちろん私が東北水研に入所したといったつまらなぬ理由からではありません。その年、非常に大規模な親潮の変動が起こり、それに伴って東北海区の沿岸・近海域に「異常冷水現象」が発生したためです。
 赴任したての4月頃、朝や午後のお茶の時間には必ず当時の黒田部長、武藤・工藤両室長が異常冷水の現状分析やら今後の見通しについて(年がいもなく)、熱っぽく議論していました。その席で話題となった“養殖ワカメに被害が出た”とか“津軽海峡で鯛が浮き網ですくった”とかのニュースを聞き、また、両室長のマスコミとの対応等を目の当たりにし、大学とはひと味もふた味も違った水産研究所の海洋部の社会的役割を直に感じることが出来ました。入所するとすぐ特研「暖水漁場」のチームに組み込まれ、それがすむと休むまもなく今度は「暖水水域」で働かされました。東北水研で研究に割く事のできた時間のほとんどをプロジェクトに使いましたが、後日この「異常冷水現象」について、ささやかではありますが、研究成果をまとめることが出来ました事を大変幸せに思っています。
 今6年間を振り返り、私にとって東北水研は、日々の業務や共同研究、所内外の色々な方々との交流や日常的なお付き合いを通して、貴重なsocialization の場を提供してくれたと感じています。
 東北水研に入所したとき、会議室で開かれた公式的な歓迎会で挨拶をさせられ、その時、私の故郷である高知のよさこい節の一節「ゆうたちいかんちゃ、おらんくの池にゃ・・・・」をひき、私も東北海区を「おらんくの池」とよべるようになりたいと喋りましたが、6年たって結局東北海区の海洋構造の複雑さに途方にくれたまま立ち去ることになってしまいました。少し離れた所から東北の海を眺め、東北水研の方々の活発な研究活動を刺激としながら再度チャレンジできる機会を楽しみに待とうと思っています。
中央水産研究所海洋生産部変動機構研究室長

Kuniaki Okuda

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