水産業の真似事

浅野 象治


 退職後は晴耕雨読型の生活ですが、昭和56年頃より昭和61年頃まで神島外漁業協同組合において模索した水産業について書いて見たい。
 あかがいが以前発生したことがあると云うので、あかがいの養殖に着手しました。先ず、岡山県水試の指導のもとに養殖グループと一緒に山口県下松漁協へ見学に行き、そこより種苗を購入して高島北部へ籠に入れて投入しました。ついで日生漁協へあかがいの人工採苗と養殖場を見学に行き太陽灯を通した海水を用い人工的に受精を誘発している旨説明を聞きました。この技術は東北水研において開発されたものだと聞き感激しました。
 投入したあかがいの種苗は夏場に大量弊死しましたので南西海区水研へ行き指導を受けましたところ、水温に限界があることを知り水温についても余り調査を行わなないで着手した軽率を恥じ、また、成貝で収益をあげている例が僅少である点も考慮して断念しました。
 海苔養殖は岡山県主催の講習会に出席し、講師として来られた西海区水研鬼頭鈞技官の講義をうけたことがありました。海苔の生産は全自動機械の導入もあって順調にあがりました。
 もがい養殖の斃死について元佐藤重勝所長の助言を頂いたことがありました。九州産種苗を中止して韓国産を投入したところ残存率はあがりましたが肉質、大きさ等稍々劣っている様でした。連作が原因と思われましてか最近では九州産が復活してきました。
 人工干潟に浅蜊の稚貝を投入したところ、県水試の追跡調査で移動している旨通報を受けましたが防止策がなく処置なしでした。幸い隣接漁場で成貝となって採捕はしました。
 人工干潟造成は港の浚渫土等を投入してから良質土砂を上積みする方法で施工しましたが投入土等に混入していた木片、廃油等が流出、投入場所・投入物の監視人を置くとか、投入後の土質検査等幾多の問題を生じて難行しました。
 保護水面海域を設けて稚魚育成をはかりましたが、密漁の被害を受けて困りました。
 がざみの中間育成(補助事業)は牛窓町栽培漁業センターより稚魚を受け入れ囲い網内にて飼育放流するもので、稚魚運搬と投餌は組合で行い、残存率の測定は県水試で実施されました。
 わかめ養殖は以前行ったことがあり、その種苗が散乱して海岸一帯に自然発生するようになり生産過剰で安価となりました。
 在職中事務屋で研究を傍観した私に水産の組合事業は見よう見真似では駄目だということが分かりお粗末な体験で終りました。しかし、今後も水産には関心をもって生活をして行きたいと思っています。
Shoji Asano

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