山下 洋

日本酒とホヤ



 東京大学海洋研究所漁業測定部門から転任してまいりました。海洋研時代はカイナゴ、マイワシ、カタクチイワシなど多獲性魚類の初期生態の研究を行っていました。東京のどまん中、中野区、海よりも新宿歌舞伎町の方が圧倒的に近いという苦しい(人と場合によっては好)条件下、カタクチイワシ親魚を閉鎖式循環水槽で飼育して産卵させ、ふ化した仔魚をテニスコートわきに作ったクロレラワムシで飼育し、25ミリまで育てる等の努力を重ねてきました。しかし、フィールドから遠いことや研究施設による制約から海産魚類の研究は思うにまかせず、必ずしも系統だった研究を行うことができながったのが悔やみです。Hojortのcritical period仮説が1960年代後半から脚光を浴び、今や水産研究の主役のひとつとして、初期減耗がさかんに研究されていますが、11年間初期生態研究を続けてきた私の印象は、仔稚魚期の生き残りが資源量水準を決定するという考え方に必ずしも肯定的ではありません。Hojortの仮説は、一部では確かに実証されつつありますが、魚類に普遍的に適用できるものか どうかはいまだに不明です。もちろん初期減耗研究が最も重要な分野であることには異論はありません。ただし、これだけでは解決できない問題も山ほど出てきます。その時必要なのは、もう一度生活史全体を見直すことではないかと考えています。私は東北水研でヒラメやクロソイ等沿岸性有用魚類の生態研究を、“つくり育てる漁業”の技術高度化のための基礎研究という観点から進めていくつもりです。できればゆりかごから墓場まで、魚の一生の動態とそのメカニズムを、フィールドが近いという最大の利点を活かして研究したいと思います。
 九州で生まれ育ち、はじめての東北での生活ですが、お米のうまさにおどろきました。おかずがいりません。また、日本酒(浦霞がいいですね)とホヤの組み合わせは究極のメニューです。東京時代と比べると、生活の楽しみも増したような気がします。
資源増殖部魚介類増殖研究室

You Yamashita

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