沢田龍治

W氏のTシャツ



 W氏のTシャツはそこにあるのがいい。例えばW氏がそれを着てチニスをしたり、ピッチングでアプローチ・ショットの練習をしたりするのよりも、ましてや泥だらけになってサッカー・ボールを追いかけまわしたりするのもよりも、やはりW氏のTシャツはそこにあるのがいい。
 朝、出勤のために、水産加工団地の長い長い直線道路を東北水研に向かって歩いていくと、やがてそれが見えてくる。W氏のTシャツだ。東北水研本館庁舎の2階のいちばん左側の窓が開いていて、ハンガーにかけられたその黄色いTシャツが、朝の涼しい風に吹かれてゆらゆらゆれていた。
 給料日、M氏の赤いファミリアの助手席に乗り込んで『パチンコ・ジャンボ』に行く。空いているスペースを見つけるために駐車場を見わたしていたM氏が笑いながら指差す。今日はどうしてもはずせない用事があるからと、5時丁度に帰ったはずのS氏の白いブルーバードが、そこにある。こういうヤツが一人勝ちすることに、時として僕は憤りを感じた。
 土曜日の午後のサッカーの試合。それぞれのプレーのレベルや試合の内容はさておいて、老いも若きも不思議な躍動感に満ちあふれていた。
 二段かさねの丸い重箱と言えば『更科』の「うどん定食」だ。下の段には天ぷらうどん、上の段には炊き込みご飯と卵焼き、そして野菜サラダが入っている。上の段にカレーが入っているものは「うどん定食のカレー」と言うやつだ。これもうまい。どちらも580円(消費税導入後の値段はわからない。)
 残業の日の夕食はほとんどこれだった。仕事が忙しくなれば、何日でも続けて食べた。
 続けて食べることにそろそろ飽きる頃、きまって算盤の名人であるS係長が宿直室へ行けと言う。こたつの上には『いな長』の「とんかつ定食」があり、その横にはお茶がいれてある。涙をふきふき食べた。
 東北水研でのさまざまな思い出を、思いついた順番に4つだけ書いてみました。
水産工学研究所勝どき庶務分室

Ryuji Sawada

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