藤井武人

第二の故郷を離れて



 配置換えにより6月から養殖研究所(環境管理部)に移りました。東北区水産研究所へ入所以来19年になりますが、この間職員及び臨時職員の皆さん、既にOBになられた方々、お付き合い頂いた大学、水産試験場、栽培センターの方々には公私共にいろいろとお世話になりました。厚く御礼申し上げます。
 大阪に生まれ育って親もとを離れたのが19才の時ですから、塩釜とみちのく東北とはまさに私にとっては第二の故郷になりました。数々の温泉、ブナ林、秋になると綾を織りなす紅葉、神秘的な湖、東北を流れる山脈、大河と幾つか言葉を並べると、東北の情景と多くの地名がすぐに浮かんで参ります。これらが東北の風土のキーワードだとすると、塩釜甚句、さんさ時雨、斉太郎節、八戸小唄は調査船との懇親会や忘年会とその時々の歌い手の面々を、また塩釜神社でのお花見、ぜんざい、卵酒、速成活劇などは婦人・青年部の活動を思い出させるキーワードとなります。メモリーにはこのような単語が満ちあふれています。
 ところで、入所して早々に「浅海別枠」なるプロジェクト研究の二枚貝グループに参加して以来、長い間「二枚貝の増養殖技術の開発」とその基盤となる「生理・生態学的特性の把握」を課題として研究をしてきました。二枚貝の研究は難しいとよく言われている通り当所数年間は、研究の糸口を見つけるのに思いがけない程苦労しましたが、貝の生活のリズミックな性格と環境要因の関係を知り、それに基づいて成熟・産卵のコトロールや稚貝の中間育成の技法を 確立するというように道筋をつけて課題を具体化することができた時の嬉しさはひとしおでした。しかしながら、力不足と80年代にはいって顕著になった貝毒問題への対応等で、研究の方は思うように進みませんでした。
 新しい職場でも引続きこれらのテーマを追究する事になりますが、それと共に何か新しい分野にも挑戦してみたいという気持ちもあります。
 多少距離的には遠くなりましたが、これまで以上に変わらぬ御交誼と御指導のほどよろしくお願いいたします。
養殖研究所環境管理部技術第二研究室長

Taketo Fujii

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