退任の御挨拶

服部茂昌



 昭和62年12月1日付けで東北区水産研究所長を最後に水産庁を退職いたしました。顧みれば、昭和23年3月31日に当時の農林省水産試験場の奉職以来、およそ40年の長い間、皆様の厚い御指導と御交誼を頂きながら大過なく楽しい研究生活を送らせて頂きまして感謝に堪えません。この紙上をお借りして厚く御礼申しあげます。
 昭和23年当時は、戦後のわが国の復興の槌音が高くなりつつある時で、一方では食糧難の時代でもあり、水産食糧資源を確保する方策を早急に打ち出すことが水産試験研究機関に課せられた大きな命題であったと記憶しております。その一環として、昭和10年前後を頂点としてそのあと漁獲減の著しかったマイワシの不漁対策調査が開始され、昭和24年度からのイワシ資源委託調査が都道府県水産試験研究機関の協力ではじまろうとしている時で、私もその一員に加えて頂き、産卵調査関係を担当し、昭和47年に北海道区水産研究所に転出するまで東海区水産研究所で従事しました。この調査はその後、沿岸重要資源委託調査となり、昭和38年冬春季に起こったわが国近海の異常冷水現象を契機に昭和39年度から開始された沿岸沖合漁業漁況海況予報事業の発足とともに 内容の変更を伴いながら継続されており、各種の沿岸資源調査のモデルとして発展してきています。
 漁業を近代的な産業として発展させるためには、漁業の対象になる海洋生物の生態及び資源の動向を正しく認識しておくことが前提であることは言うまでもありません。また、これらの生物生産の法則性を明らかにし、それを活用して経済活動を通して持続的に豊富なしかも安定した漁業生産をあげるための理論や技術を創出して、漁業の維持と発展に資する必要があります。このための調査研究が戦後40年にわたって水産試験研究機関の協力で行われてきており、今後もその方向は変わらないものと思います。一方、200海里体制の定着化に伴って、わが国の水産施策も大きく転換せざるを得ないことになり、国際的にもそれぞれの国の200海里内の水産資源をいかに管理し、有効に利用していくかが問われております。わが国でもいわゆる資源管理型漁業をめざした管理モデルの開発が図られています。
 東北区水産研究所をはじめとする各海区水産研究所も発足以来39年が経過し、昭和61年からはじまった見直しにともない、昭和63年度から研究部門の組織が変更されようとしていますが、これも時代の要請に対処できる方向で考えられており、その中で今まで以上に調査研究の深化が問われているものと思います。このような情勢の中で、21世紀に向けて水産研究の足場をしっかりと固めて前進されるよう祈念いたします。
 東北ブロックの試験研究機関をはじめいろいろな方々に大変御世話になり、心から感謝申しあげます。
 永い間の御指導・御協力、本当に有難うございました。
前所長

Shigemasa Hattori
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