相澤幹夫

コンピュータ利用による効果の一例

─八戸支所での経験から─



 仕事にコンピュータを利用するということが当たり前のようになっていると思われる今日、様々な分野でコンピュータの導入が盛んだ。
 自治省が行った地方自治体のOA機器利用状況調査(S62年度)の新聞報道によるとオンライン、データベースなど情報処理システムの高度化とともに、OAの三種の新器であるパソコン、ワープロ、ファクシミリの導入が大幅に増加し、なかでもパソコン(前年度比57.6%)、ワープロ(同64.9%)と急増。またパソコンは都道府県が、ワープロは市町村がそれぞれ積極的に導入しているということである。
 東北水研が所在する塩釜市の商工会議所が行ったOA機器活用実態調査(市内91事業所対象)でも81.3%の企業が導入し、第1位ファクシミリ、第2位ワープロ、3位パソコンの順で、特にワープロ、パソコンの大幅な上昇が目立ったという。
 我が東北水研はどうだろうか。OAの三種の神器はすべて導入されているが、パソコンが圧倒的に多く全体で22台、研究者数でみると本所3人に2台、八戸支所3人で1台である。1人1台という部・室もある。日本語変換ワープロ専用機は3台、ファクシミリは1台である。パソコンは専ら研究部門で、事務部門はワープロ専用機2台となっている。
 さて、仕事にコンピュータを利用するとどのような効果が期待できるのだろうか。八戸支所での極めて浅い経験からその一部を述べてみたい。当時(昭和58年4月)支所にはマイコン1台、パソコン1台、そして購入したばかりのワープロ専用機1台だった。パソコンのほうは、研究者数人が利用していたが、ワープロはまだ誰も扱えなかった。そこで納入業者に操作方法の説明をお願いしたのだが、業者自身もよく分からないという状態であったからワープロはまだまだ一般的ではなかったのかもしれない(少なくとも八戸地域では)。しかし庶務の若いS氏は一人先陣をきって使い始め、その後一人の研究者も使うようになった。筆者が使い始めたのはさらに遅れ1年後だったと思う。ワープロで簡単な文章を作成することに慣れてくるしたがって、文書も単に文字だけではなく表や図が入るようになりテクニックが必要となる。また演算機能もあったから簡単な計算をさせる。しかしスピードは遅い、もっと早く処理できないだろうか、こんな機能があったら・・・といろいろな欲望がでてくる。そこで登場したのがパソコンである。現在八戸支所の事務ではパッケージソフトとして市販されているワープロ、表計算プログラム、データベースの3種類のソフトウェアを使用している。その一つパソコンは専用機に比べ格段と性能が向上した。文書作成はワープロでというのが当然のごとく使われるようになってからは作成時間が大幅に短縮された。利用効果の最大の利点はこの「時間短縮」「省力化」だと言える。これまで行ってきた手書き、あるいは和文タイプライターに比較すればその比ではないのである。それに作成した文書データの活用も自在にできるから研究室にとってもなくてはならない存在に違いない。また印刷物の編集にも応用できるだろう。投稿者から寄せられたワープロ原稿を一つのファイルあるいは複数のファイルにまとめ、印刷する1ページの字数に修正し、仕上がりページ数を正確に決められるということである。これで予定価格積算の精度向上につながるのではないだろうか。さらに、限りなく活字に近いレーザープリンターで打ち出せば、印刷所における印刷過程の文字組(写植)の部分がカットされ、いきなりカメラ撮りから始まることになる。これはひとつの波及効果だ。他に様々な応用が考えられるだろう。最近のパソコンワープロの性能は専用機とほとんど差はなく、むしろ専用機を凌ぐ機能を備えているぐらいだ。各種ソフトウェアの中では一番多く使われているのではないだろうか。ちなみに、昨年函館で開催された日本水産学会秋季大会での研究発表は858題、このうちワープロ作成で提出された発表要旨は759題、88.5%だった。このように多くの人が利用している状況である。また最近では提出する文書を「ワープロで打ってください」「フロッピーごと送れ」など外部から要求されるに至っている。某民間会社の例では企画書、報告書の作成は過去「手書きのみ」から「手書き可、ワープロ可」そして「手書き不可、ワープロのみ」となったということがある本に書いてあった。こうなるとワープロは嫌いだなどと言ってはいられない。好むと好まざるとにかかわらずワープロは既に使わなければならない時代に入っているのではないだろうか。
 つぎに表計算プログラム、表型計算のできるノンプログラミング言語、簡易言語といわれている。事務部門では給与計算のほか表形式の計算が比較的多く、定期的に作表するスタイルをあらかじめ作っておけば、データを入力するだけで即プリントアウトできる。電卓で計算するよりははるかに効率的であることは言うまでもない。繰り返して言えば処理時間の短縮、効率アップであるが、必ずしもすべてがそう出来るとは限らない。処理時間が同じであるならば、或はそれ以上かかるとすれば何もコンピュータを使う必要はない。しかし、かかる時間が同じでも仕事の「効果の増大」「成果の向上」が図られればその利用効果はあったということができる例えば(あまり良い例ではないが)、表1の共済借入金弁済シュミレーションを紹介したい。ご存じのように貸付種類は、普通、育英、住宅、特別の4種類、貸付条件はまちまちであるが各条件をすべて満たす上で弁済回数、月弁済額を決定し利息総額等を求める。この表のA案では最長弁済のデータが、B案では自己の支払い能力に応じて月弁済額を増額(千円単位)し、A案・B案を比較し意志決定のための判断資料とするものである。表2の借入金弁済表は、シュミレーションで得られた弁済回数、月弁済額等のデータを入力し弁済回数だけ計算するというものである。シュミレーションでは借入金が弁済回数で割り切れない場合(最終回だけ弁済額が異なる)、毎月の利息計算での円未満切捨てということから利息総額、元利合計に誤差(僅かな差)が発生する。このため「弁済表」で月毎に計算し正確な数値を求めるものである。この表からつぎのようなことが読み取れる。貸付規程では「臨時弁済」ができるとなっており、その弁済額は毎月の弁済額の整数倍の額とし、その回数分だけ繰上げ弁済額は変更しないということである(このような条件は銀行ローンなどにはない)。つまり臨時弁済によって臨時弁済分の利息が減少することになり、結果として利息総額を小さくすることが出来る(利息負担の軽減)では、どれだけ減少するだろうか、表の例から10万円を弁済した場合の利息を合計して、定額預金した場合の利息と比較していただきたい。第1回目の弁済開始が1月として、ボーナス支給月にその一部を充てる。表では7回〜16回分となるが減少する利息合計は16万円以上となる。元金均等弁済の利息計算は残金に対して掛けられているから、残高が多いほど利息金額は高くなる。一方銀行の1年定期が利率、現行(2/22現在)3.39%で利息が3,390円、4月以降だとマル優廃止により20%課税されるから受取利息2,712円とさらに少なくなる。10万円を定期にするか、臨時弁済にするか、さてどちらがトクが考えてみよう・・・ということになる。返済余裕金ができたら臨時弁済は是非活用すべきだ。
 借入申し込みをすると、いくら借金できるか、弁済金額(最長)は月額いくらになるか、利率は、という条件は説明されるが、表に示す利息総額、元利合計、一目瞭然の「弁済表」などは電卓計算ではなかなか面倒である。住宅貸付のように高額になると弁済金額をいろいろ変えて、その結果をリアルタイムに回答するということは不可能であるし、そんなことをしていたのでは担当者はたまらないであろう。しかし、借りる人にとってみればもっとも必要とする情報であるに違いない。
 コンピュータを仕事に利用することによって、これまで手作業では出来なかったことが可能となった。処理時間がほぼ1日要するものが1時間足らずで終了した。データーベースでは物品の把握、管理(物品管理)が容易になった・・・等々、仕事の一部分をコンピュータ化するだけでもかなり効率的である。しかし、組織の一部のみの利用や限られた人の利用だけではその効果はまだまだ小さい。事務部門でいえば本所・支所共に利用する、そして多くの人が使ってこそその効果は大というものだ。コンピュータ導入には、この点を無視してはならない。
企画連絡室 情報係長

Mikio Aizawa
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