表紙写真の説明


 近年、STD.CTD.バリオセンスなど、現場における海洋観測用の測器の発達には目を見張るものがあるが、通常観測における動物プランクトンの採集となると、我が国では未だに丸特ネットや丸中ネットの鉛直曳きが主体である。しかし、動物プランクトンの鉛直分布や日周鉛直移動を観察するような場合には、層別に試料を採集する必要がある。また温度躍層や塩分躍層が発達した水域では、プランクトンの組成は躍層の上下で著しく異なり、生物量は躍層付近でしばしば極めて多くなるため、現場の物理・科学的構造から判断して、採集層を決定した方がよい場合もある。そのため、近年は、水温、塩分、曳き網深度などの環境情報を同時に収集しながら多層を曳網できる“生物採集システム”とも呼ばれるべきプランクトン採集器の開発が行なわれつつある。表紙写真に示したプランクトン採集器は、通常の海洋観測において層別のプランクトン試料を簡便かつ定量的に採集することを目的として、当水研資源部第3研究室の小谷祐一技官が試作した“鉛直曳の多段開閉式プランクトン採集器”で1986年2月の照洋丸による調査航海において試験した結果、十分に実用に耐えうることがわかった。これによりプランクトンの生態、魚介類の索餌・摂食行動等の研究の発展が期待される。
(T.Y.)

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