離任して、今

篠岡久夫


 3つの年を過した学びの舎。これが、離任して南西水研に転じて3カ月を経た今において感じている、私にとっての東北水研であります。東北水研に任をえたことによって、はからずも、有形に無形になにかと少なからぬことを、はじめて体験し感得してこと覚えるからであります。そして、それらが今の私をなにくれと益しているように、そこはかとなく思われるからであります。
 さきごろ、東北水研所長発の昭和60年度第1回さんま漁海況予報会議の開催通知に接して、多分にときめきを感じました。今年の北上集群域はどこにどう形成されているかにはじまって、初漁位置は、水塊配置は、南下経過はと討議を激しく展開して、総漁獲量を含む予報を成文するにいたるまでの模様が大いに懐かしまれます。こうした沖合・大洋規模の、緯度と経度をもって論じる海洋と資源に、私が接したのは東北水研においてないのであります。そして、こうした漁海況 予報は蓋然性に根差した蓋然性としての予測であるべきではとか、さんまについては北上集群の様態こそをその漁期の成行きを制する条件として最も重要に位置づけるべきではとか、口はばったいことを言って、汗顔のいたりでした。東北水研在任がなければ、沿岸浅海・内海内湾のみの私が今なお依然としていたであろうと思われます。
 今、南西水研所長から安芸の宮島を眺めて、あの松島との比較景観論とでもいうような思考を愚考なままにたのしめるのも、東北水研在任があったからこそであります。
 とにかく、東北水研で、東北海区で出会わせた、めぐり合わせた事態、事象のあれこれが、折にふれては素直に思い起こされて、感懐することであります。東北水研・東北海区の皆さまのますますのご清祥をひとしおにねがう所以であります。
南西水研所長

Hisao Sasaoka

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